インターネット上にあるコンテンツの質を比較する方法はない

えふしん | BASE,Inc. CTO , (株)想創社代表取締役

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最近、メディア業界において、ネット上のコンテンツの質問題について議論が増えている。バイラルメディアが、既存のコンテンツの引用の範囲を超えて、堂々と流用する形で、再配信を担ったことで人気が出たことがきっかけだと思う。(正確にはバイラルメディア企業がM&Aされたり、一部上場企業が運営する形で、業界全体が今の流れにお墨付きを与えたことに対する危惧ではないか)

メディア論的な危惧は僕の専門外なので、僕が語る力ないのだが、それはそれとして疑問が残る。

・ネット上のアイデンティティ(特定のWebサイトや、特定のブログ、日経等のリアルで信頼を積み上げているニュースサイト、バイラルメディア)に対する、ブランドや信用力とはなんなのか?

・ブランドに対する信頼とはなんなのか?長く運営されていること?常に読みたくなる記事が生産されていること?

Webサイトは運営に必要な損益分岐点が低く、頑張れば長く運営するのはそんなに難しくない。仮に粗悪乱造と言われる記事だったとしても、それを情熱を持って作っているなら、価値は認めてあげるべきなのではないか?少なくともスタートアップ視点としては、その視点は無視できない。

良質なサイトの定義を、

・継続的な運営ができていること。

・相応にファンがいること

と仮定してみる。

継続性はわかりやすい。継続性に対する見返りは、Twitterのフォロワー数にせよ、Facebookのいいね数などで提供されいてるからだ。

そして、「ファンが居ること」をPVや、はてなブックマーク、Facebook等のいいねボタンで計測すると仮定すると、はたして、信頼されるメディアと、そうでないメディアは、定量的に可視化できるのだろうか?

現状では無理だ。これだけでは足りない。

現状で言うと、1PVあたりの信頼のようなものを可視化することができないというのが、「粗悪な記事を乱造した方が儲かる」という根本的理由だと考える。

少なくともインターネットサイドから定量判断できるのは、それだけではないかと思う。

例えば、反原発のトンデモサイトがあったとして、でも、311以降ひたすら反原発の記事を量産しつづけて、信者も相応についているサイトと、信頼されるメディアで、毎日記事を量産しつづけて、読者が相応についているサイトとの、定量的な区別というのはつかない。

もちろん目視で見れば、このサイトは○○だよねってのはわかるだろうが、それはあくまでも主観的な評価であり、デジタル上、その価値を計測するのが難しい。

コンピュータは計算機なので、数字上出てしまっているものに序列をつけるのは難しい。

何かの序列で数値化しないことには、信頼されるメディアを優先して表示することは難しい。それをお金の序列でコントロールしようとするのが、SmartNewsなどのメディアチャンネル戦略なのだろう。

それがモバイルインターネットという狭い面積の世界で勝つためには重要な方法論でもあることはわかっている。

しかし、それだけでは大手が常に勝ち続けるという構造になって、既得権益化してしまうので、個人的に、それだけになってしまうのは望ましいとは思わない。才能ある人がゼロから頑張って勝ち上がっていく仕組みが絶対に必要だ。

しかし、その序列を単純にCGMと1人一票というランキングシステムに委ねると、サービスが人気が出ると起こる「大衆化」「衆愚化」を繰り返して、水は低きに流れるというのが、これまでで判明した歴史である。最近問われている民主主義の問題そのものとも言える。

メディア側としてはこれを防ぐためには、いくつか思う所があって、

・記事単価が低くなり、メディア業界が成り立たなくなることで是正される。(エコシステムからの逆起電力が発生し、自然に是正される)

・ネイティブアドに振り切って、広告効果という経済合理性で優位性を作る(顧客のセグメント化)

・コピペされるインターネットに記事を出さない

・粗悪乱造と言われるメディアが、もし法律上よくないことをしているのであれば、徹底的に訴えて絶滅させる

と、プロにとって脅威になる存在を消すか、自分たちがどこかに特化するかの2つしかないのではないだろうか。インターネットは、上位層以外に力を与えるのが魅力である。常に上位層はこれまでに得た既得権を破壊される側に回る。思考の整理学という20年以上前の本を読んだ時に、当時の知識労働者の悩みを、一ブロガーが共感できたことに感動を得たことがあるが、そういうことなのだと思う。それがコミケや2ちゃんねるのように原則アンダーグラウンドにいるなら無視もできるが、成功したスタートアップの規模が巨大化し、ナショナルクライアントの広告を取り合うような明らかな競合として出てくると差し迫った脅威になるので無視できなくなったのが今の議論の背景になる。

もしそうではなくて、ネット上のコンテンツの信頼性を適切に数値化して、序列化できるようなアイディアや方法論があったら是非教えて欲しい。この記事の目的は、ここに書いたことを認めてもらうことではなく、議論、反論をいただきたいと思っています。

参考文献:

佐々木俊尚氏とスマートニュース松浦氏が考えるメディアの仕組み - ログミー

なんてことのない記事ばかりがネットに溢れる理由|ネットジャーナリズムの光と影 奥村倫弘|ダイヤモンド・オンライン

えふしん

BASE,Inc. CTO , (株)想創社代表取締役

FA装置メーカー、Web制作のベンチャーを経て、2006年にGMOペパボへ。ショッピングモールサービスにプロデューサーとして携わるかたわら、2007年からモバイル端末向けのTwitterウェブサービス型クライアント『モバツイ』の開発・運営を個人で開始。モバツイ譲渡後、2012年11月6日に想創社設立。2014年8月 無料のショッピングカートサービス「BASE」のCTOに就任。現在、BASEを主軸に活動しつつ、モバイル・アプリサービスの「ShopCard.me」の運営もしている。また慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科 後期博士課程の現役学生でもある。

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