国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長の訪朝が中止となった今月21日、外国人の女性活動家や在米韓国人など30人以上からなる「ウーマン・クロス・ディーエムジー(WCD)」の代表団が平壌市内を視察した。彼らが金日成(キム・イルソン)首席の生家を訪問した際、労働新聞は参加者たちが「金主席の革命的生涯に大きな感銘を受けた」(北アイルランドのマリアード・マグワイヤ氏)、「偉大な首領様は地味なわらぶきの家で誕生し、生涯を人民の自由と解放のために全てささげられた」(在米韓国人のアン・ウンヒ氏)などと述べたと報じた。WCDは韓国に戻った後、「労働新聞の記事は捏造(ねつぞう)」と主張しているが、それでも北朝鮮住民はWCDが金主席を称賛したとしか知らされていない。
WCDは訪朝前にニューヨークで会見を行い、今回の訪朝目的を「離散家族再会と平和協定締結を促すこと」と明言していた。ところが北朝鮮は意外にもWCDについて「韓半島(朝鮮半島)の平和と統一に寄与している」などと評して大きく歓迎し、2010年3月の韓国海軍哨戒艦「天安」撃沈事件を受けた北朝鮮への制裁措置(5・24措置)からちょうど5年となる24日、非武装地帯(DMZ)を通過し陸路で韓国に戻ることを認めた。
北朝鮮は5・24措置について「同族の交流を妨害する最大の障害」などと今なお主張しており「離散家族再会も5・24措置が解除されない状態では不可能」と宣言している。そのためWCDが5月24日に陸路で軍事境界線を通過したことは、北朝鮮の一方的な主張に同調するかのように受け取られる恐れがある。少なくとも「5・24措置解除」に向けて韓国政府に圧力を加えるため、WCDの訪朝が北朝鮮に利用されたことだけは間違いない。
今年に入って北朝鮮は、離散家族再会行事を含む南北間における全ての対話を拒否している。さらに金正恩(キム・ジョンウン)第1書記によるロシア訪問の一方的な中止、潘基文事務総長による訪朝の突然の不許可など、北朝鮮は自ら鎖国の道を突き進んでいる。その一方で自分たちの意にかなった人物や団体には訪朝を認め、体制の宣伝に利用している。離散家族団体「1000万離散家族委員会」のイ・サンチョル委員長は13日の会見で「北朝鮮は口を開けば民族や人倫などと口にするが、訪朝を認めるのは(自分たちの意に沿った)外国人や海外在住の従北韓国人ばかりで、高齢の離散家族に対しては墓参さえ認めない。これでは言うこととやることが完全に矛盾している」と批判した。
韓国政府は5・24措置解除を前提とした南北対話をすでに提案しているが、北朝鮮が本当に解除を望むのであれば、同族に対する一方的な批判や偏った態度をやめ、まずは対話の場に出てこなければならない。韓半島の平和と統一もここから始まるはずだ。