ソフトバンクが創業以来の危機に直面している。半年に及ぶ買収合戦の末に2013年7月に総額216億ドル(為替予約分も考慮し当時の円換算で約1兆8000億円)を投じて手に入れた米携帯電話3位、スプリントの経営不振が深刻化し、立て直しの道筋が描けなくなっているからだ。当初のもくろみと異なる形で米携帯電話市場に参入した結果、消耗戦を余儀なくされ、今年2月には端末開発などをスプリントと共同で進める拠点を縮小した。買収後に為替レートが大きく円安に振れ、為替差益が見込めることもあり「ソフトバンクがスプリントを手放す可能性が高い」といった噂が広まる事態にもなっている。
膨らむ損失と厚い壁
スプリントの14年10~12月期決算の最終損失は23億7900万ドルに膨らみ、年間では前年より10%多い33億ドルに上った。15年1~3月期の最終損失は2億2400万ドルに減ったものの、前年同期の最終損失1億5100万ドルを上回っている。
ソフトバンクの孫正義社長は5月11日の決算発表会見で「腹の中で(再建に)自信が深まってきた」と説明。ただ、その3カ月前の会見では「再建は長い戦いになる。道半ばだが、改善している」と述べながら、顔色は曇りがちだった。