星のめぐりが巡り巡ってリバイバルムード、何の因果かネットで話題の復刻ニーズ、どこから知ったか海外からの問い合わせ。
何が起こったか、きっかけがなんなのか。
昔の製版データを引っ張りだすのにたいそうな理由は要りません。自分とこの持ち物ですからね。
理由は不要、でもそれだけでは出てこないのが仕舞い込んだデジタルデータ。
いま欲しい昔のデータ、さてどこに、どのように残っていて、そしてそれは昔と同じように使える?
今回は、古いデータを引っ張りだし、何かしら使う際の注意点について解説します。
■そもそも読み出す機械が
デジタルデータとはいえ、何かしらの物理媒体、記録メディア、いやアレですよ懐かしのMOディスクとか今でも現役CD-Rとか。古いデータはそういったモノの中にあると思います。
オンラインストレージ? たくさんのサービスが出ては消え、買収され吸収されて改名して、なかなか落ち着かない話ではありますね。あと、オンラインストレージによっては「それ方面」のデータがネットでアクセス可能な場所に置かれるには不適切として勝手に消されるという話もありますので、ちょっとだけご注意ください。
▼MOディスク
MOディスクはカートリッジに包まれ、材質劣化期間も長く、読み取りレーザーの出力も弱い等々の理由からかなりの耐久性を誇ります……ディスク自体は。
2014年8月時点でMOドライブを製造するメーカーは無く、かろうじてロジテックが直販でかつ生産終了品として扱ってます。お値段はなんと6まんえんとたいへんお安く…安くないわ! いやまぁ中古であればヤフオクもあるでしょうし、編集部や製版屋、アキバのジャンクや田舎のハードオフにもあるかもしれません。つっても稼働すんのか微妙ですし、ディスクは高耐久性でもドライブはわりとヘタるの早かった経験が。
弊社はまだ若干の台数を揃えておりますので、ご希望に添える可能性もあります。懐かしき5インチMOディスクとか、大容量2.3GBMOディスクとかじゃなければですが…
▼FDD、JAZ、ZIP、ORB、PD等々
FDDドライブはわりと生き残っています。構造がシンプルなので壊れず倉庫で眠ってたりとか、Win向けのドライブが流用できますから。
でも他は難しいでしょうね。ZIPやPDはヤフオクでなんとか、でもORBやJAZは微妙のような… このどれも弊社は捨ててます。ZIPも結構使ってたんですけどねー。
メディアの変換サービスをやってる会社もグーグル先生に聞けば出てきますので、さっさと変換したほうが良いような…でも今までそこで眠ってたんですから、これから必要になるかは怪しいですね(笑)
弊社では殻付きDVD-Rをバックアップに使っていた時期があり、その都合からPDドライブはまだ生き残ってます。意外と壊れないので気を許してますが、いざというときの代替機が無いのでちょっと不安です。
▼HDD
HDDの大容量化が進み、記録メディアをHDDへ切り替えた方も多いかと思います。
ですが気づくと変わっている接続規格。SCSIは色んな種類がありましたし、FireWireはFW800とか合ったはずなのにいつの間にか消えました。内蔵HDDの規格も違いますしね!
そしてHDDが動作するのかという最大の懸念事項が…
MOやCDといった可動部のない記録メディアと比べ、可動部の経年劣化があるHDDが壊れやすいのも事実、しかも大容量HDDならまとめてすっ飛んだ時のダメージは相当なものです。
…そういうのが怖いからなんやかんやで移し替えしていると、最新のHDDが壊れた時にさてどれがもう一つ前のHDDなのだと迷うことになります。
HDDなんて消耗品ですから、マジックで大きく日付も名前も書いちゃいましょう! ……書いときゃよかったウウウ
▼まとめ
メディアだけ残しても再生媒体が無くて詰むので、ホントに必要なら移し替え移し替えで頑張りましょう。VHSテープのように、なんとなく「あー、どうしよっかなー」って放置してると困りますよ! 捨てちゃってもいい気もしますけどネ
■そのファイル、いったい何?
データの入ってるメディアは見つけた、OSは違うけどなんとか読み出した 、さて、この白アイコンのファイルはホントに開くんでしょうか?
というか、そのファイルはレイアウト? 画像? 添付指示書? 何かの隠しファイル? もしかして:「ウィルス」?
▼制作アプリケーションと保存形式と更新日時、そして奥付
最初にぶち当たるのが、その白アイコンのファイル、いったい何で作ったの? というデカい高い分厚い壁です。
Macだと拡張子(.xlsとか.inddとか)付けない文化が続いてたので、ソフトの有る無しとは別にファイルが何のソフトでどういう保存形式が区別付きません。Windowsならなにかしら拡張子が付いてますから、グーグル先生に聞けばたどり着けるハズ。
OS9時代のデータなら、ファイルの属性、設定値を見るソフトも存在しますが、それを使いこなせるのかってーとそれはまた別問題。テキストエディタ(Jeditやmi等々)でムリヤリ開き、文字化けの中に残る有意の単語を探す手もありますが、そのへんも難易度高いでしょう。
なので、データ考古学的的にファイルの更新日時や制作時期、ファイル名やデータサイズから推測していきましょう。
まず年代です。製版印刷業界でのOSXへの切り替えが始まったのは2005年あたり、OSX10.4TigerとInDeignCS2が揃った時期と記憶しています。OSとソフト両方とも全く新しいものだっただけに、作業者の学習、習熟には半年から1年くらいあったと考えましょう。
OS9が動作するPMG4機の最終製品が2003年発売で、そこから3-4年経って新機種への転換、導入、更新が入ったとして2006年あたりが基準となりそうです。
ソフトについてはQuarkXPress3/4とIllustrator7-9あたりのシェアが高かったですね。OS9でもInDesign2は使えましたが、ほぼ入稿は無かった記憶が。フォントの都合か、挙動が重くて重くて……とある役場の広報紙制作に使いましたが大変でした。
ファイル名から察するのはわりと簡単ですよね。「誌名」「ページ数」ファイルはたいていレイアウトでしょうし、通し番号が付いてるファイルで容量が数メガバイト以上なら画像、グラフやキャプション名が使われていたらIllustratorやPhotoshopで作られた図版と。のこりはライターのテキストファイルだったりしますが、どうせレイアウト上で校正・修正・訂正されてるでしょうから要らないと思います多分。
2006年以前ならOS9、QuarkXPress3/4、Illustrator5.5-9
2006年以降ならOSX、InDesignCS、IllustratorCS
それでも分からないファイルは、とりあえず後回しにしましょう。レイアウト開いて、何か足らないなら考えるということで。
▼制作データなら
ぶっちゃけた話、入稿前の制作データは作業ファイルが山盛りのモリモリで整理付いてないことがほとんどですから、レイアウトデータの大本、ひな形、使ってるパーツのファイル名を確認するとか、その程度に押さえた方がよろしいのではないでしょうか。
古いデータをひっぱり出したわけですし、作った人に連絡取れてもどれがどう出来てどう作ったか覚えてないでしょう。
あと、テキスト原稿はもしかしたら大昔のMSWordや一太郎……もしかしたら松とかEGWord、聞いたこと無いワープロソフトとか! もしかしてなつかしのクラリスワークスとか。
でもポジティブに考えれば、入稿用完全データじゃないし素材なんだから好きに開いてぶっこ抜ける気安さはありますね。
フォントの互換性とかアプリのバージョンの違いで云々とかガン無視できます! ステキ! ソフトだって体験版使っても良いじゃないですかそれで入稿しないんだし!
最新版ならとりあえず開く、そういう感じで、以下が想定されるソフトの体験版へのリンクです。要メールアドレス登録ですが、そのへんは我慢我慢。
- Adobe CreativeCloud(2014) http://www.adobe.com/jp/creativecloud.html
- QuarkXPress(10) http://www.quark.com/jp/Products/QuarkXPress/
- EDICOLOR http://ps.canon-its.jp/ec/
- Microsoft http://office.microsoft.com/ja-JP/
- 一太郎ビューア(開くだけのフリーソフト) http://www.justsystems.com/jp/download/viewer/ichitaro/
- リッチテキストコンバータ(ワープロソフトの判別ソフトで体験版は無し) http://www.antenna.co.jp/rtc/function.html
▼製版・責了・印刷データなら
ここで確認するのは、レイアウト流用でそこそこ使えればイイやなのか、データを100%再現するか、です。
前者のように、素材として流用、テンプレートとして流用、テキスト抜いて流用、なんてことなら、制作データと同様でOKです。同じソフトで(最新版じゃなくても)新しいもの、互換性のあるものを使って、今使ってるレイアウトにコピー&ペースト、楽なもんですわ。
そして問題はもちろん後者、印刷物、以前の版面とそっくりそのまま同じ、アナログフィルム時代をそのまま刷版(いやゴミ取りはするでしょうけど)して印刷へ、って気分で使いたい時です。
▼OS9なら
OS9時代のデータであれば、100%再現はほぼ無理、です。文字溢れに行ズレ、文字化けに色の変化等々、校正というより入稿前の朱字入れに近いかもしれません。
ソフトやフォントによっては、ほぼ100%でイケますが、100%とは言えないのでむしろ精神をすり減らす可能性があります。「あるかもしれない」ほうが、「どっか有るからそこチェック」よりも大変ですよ、ヘタすると悪魔の証明になりますから。
OS9のデータをなんとかしたいなら稼働するOS9機を所有する会社に任せるべきですが、「前の刷物と寸分違わずにして欲しいけど印刷代だけでなんとかして」って頼むのは割とアレなお願いだと思います実際。
あとは以前の製版、印刷がフィルム&アナログ刷版だった場合、今はほぼノーフィルム&CTPでしょうから刷物の感じは変わりますよね。
▼OSXなら
OSX時代のデータなら、可能であればバージョンとフォントを合わせ、無理なら最新版のソフトを使い、校正(デジタルでもなんでも)を出して確認です。大幅に変わることは少ないので、とりあえずの問題は少ないです。
注意点として、製版、印刷側の都合により刷版・CTP環境が変わっている可能性があることでしょうか。
DTPソフトやフォント、出力環境が、いわゆる前世紀の精細出力技術PostScriptから、今世紀の表示・配布・出力技術であるPDFへの移行しはじめたのが2008年あたりから。
Adobe Creative Suiteの進化と、それに合わせての製版出力機の更新などが続き、結果としてOS9環境とは断絶。OSX10.4、10.5時代から見ても、印刷手前でDTPデータを処理するプログラム、エンジンは相当変化してしまいました。
これについては、ハードウェア、ソフト、フォントメーカーのサポート切れという都合で、製版・印刷業界は不可抗力というか、これでもギリギリまで粘ったといいますか。
▼まとめ
なので、ソフトもフォントもOSも揃ってるのに、校正がちょいとオカシイ、なんて可能性もあります。昔のビデオをブラウン管で見るのと、4Kテレビで見るのと違いますよねー元は同じでも、みたいな感じでしょうか。いや違うか。
とにかく、印刷までの環境も変わってるので、フロント部分だけ維持しても、そっくりそのまま同じというわけにはいきませんよ、という話です。
■最新のソフトで開く、互換性OKなソフトで開く
最後は、最新のソフトで開いた場合、互換性OKなソフトで開いた場合の例を解説します。
▼QuarkXPress
新しいバージョンで開いてもかなり忠実に再現します。というか再現性重視で開発してるのがQXP。でもフォントや画像形式はQuark社と関係無いので、そのあたりで不具合、再現性が低くなる可能性アリ。
InDesignもそうですが、Illustratorで作ったレイアウトをベタ貼り、ってんなら特に問題無いですね。
- Quark3.3/4→Quark6
レイアウト自体はかなり忠実に再現されます。つってもいまさらQXP6を調達できるワケも無いというか - Quark3.3/4→Quark8/9/10
内部的には全く別物ですが、古いQXPを積み込んだ作りになっており、かなり忠実に再現してます - Quark3.3/4→InDesignCS3以降
Adobe InDesignでもバージョンによって読み込めますよという話。読める、という程度ではありますが。- http://kb2.adobe.com/jp/cps/232/232960.html
- http://helpx.adobe.com/jp/indesign/using/converting-quarkxpress-pagemaker-documents.html
- QuarkからInDesignへ変換するQ2IDという市販プラグインもあります
http://markzware.com/products/q2id/
▼InDesign
下位互換(バージョンを下げて保存とか)は何かと話題になるんですが、上位互換の情報ってほとんど無いような…?
大幅なズレ、バケ、溢れは無いにしても、内部処理が何度か変更されているため地味なズレや、「何故か、その設定値が修正できない」といった挙動はあります、確か。
InDesignからQuarkへ変換するID2Qという市販プラグインもありますけど使ってる人の話は聞かないですね。
▼Illustrator
一番の鬼門、バージョン違いで大事故誘発のIllustratorは、アプリのバージョン、フォントの形式とバージョン、保存形式、まーいろいろなヤバい地雷がたくさんあります。できれば近寄りたく無いといいますか、最後に持ってきた理由を察してくださいというか。
- バージョン:機能が増えまくったので、バージョンが違うと文字が溢れたり詰まったり
- フォント形式:OCF/CID/TrueType/OpenTypeといろいろありますが、違うと大抵ズレます
- フォントバージョン:フォントメーカーが黙って内部の数値を更新したり、同名異体フォントがあったりで、油断してるとまぁズレます
- 保存形式:.ai形式以外で保存してるといろいろデータがすっ飛んでたりしますよ
- 貼り込み先:貼り込み先のレイアウトソフト、ソフトのバージョンを変えると、なぜか出力結果が変わることも
▼まとめ
手を抜かず、全部見よう! 見ましょう! でも人力だからチェックが抜けてることもあるよね?
■三共グラフィックの取り組み
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