カニカマ製造装置:日本食ブームでシェア7割 ヤナギヤ 

毎日新聞 2015年05月09日 19時05分(最終更新 05月09日 19時16分)

世界でも7割のシェアがあるヤナギヤの最新カニカマ製造装置=ヤナギヤ提供
世界でも7割のシェアがあるヤナギヤの最新カニカマ製造装置=ヤナギヤ提供

 カニそっくりのかまぼこ、カニカマは、日本だけでなく、フランスやスペイン、アメリカなどでもサラダの具材などに使われている。伝統食品のかまぼこは、SURIMI(すり身)と呼ばれ、日本食ブームを追い風にヘルシーフードとして普及している。

 日本生まれの食材を広めた立役者は、山口県宇部市の食品製造機械メーカー、ヤナギヤだ。カニカマ製造装置で、世界シェア7割を占めるという。

 3代目社長の柳屋芳雄さん(64)はかまぼこメーカーで修業し、1975年に家業を継いだ。当時の主製品はかまぼこ製造機器だったが、オイルショックの影響もあり、会社は倒産寸前の状況に陥っていた。会議をすれば売れない理由を論じるばかりだった。

 しかし、25歳の若社長はあきらめなかった。顧客3000件を回り、出合ったのが、当時出回り始めたスティックタイプのカニカマだった。「これは売れる」と確信し、79年に製造装置を完成させた。

 本物そっくりに作るカギはカニの繊維感の再現だ。魚をすり身にした原料をラインに投入。厚さ1ミリほどの薄いシート状のかまぼこにして、幅0・6ミリの切れ目を入れ、束ねて棒状にした。細かい繊維を絡めてカニと同じ感触にし、表面の色付けも濃淡を出して見た目もそっくりになるように改良を続けている。

 海外へ販路を広げたのは82年から。顧客と共同開発し、各国の食生活、食文化に応じた生産方法や原料調合にも対応してきた。ホタテ風味、ロブスター風味、アンチョビー風味などのかまぼこを作れるようにし、約20カ国へ200ライン以上を納入した。

 社長は取引先の生産現場に今も足しげく通う。「客が困っている問題を、オリジナルにこだわって解決する」という思いは変わらない。【中園敦二】

 ◇メモ・ヤナギヤ

 ヤナギヤは1916年創業。柳屋芳雄社長の祖父が家業のかまぼこ店を継ぎ、原料の練り作業を機械化した。50年に柳屋鉄工所を設立し、85年に現社名になった。

 かまぼこの国内市場は人口減少もあり、縮小している。ヤナギヤは、90年以降はカニカマだけではなく、豆腐、のり、さつま揚げ、ペットフード、医薬品の錠剤などの製造装置も手掛ける。カニカマ製造装置が売り上げに占める割合は現在は1割程度だ。来年は創業100周年を迎える。「老舗でも限りなき挑戦」が続く。

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