《 本項は暫定的な簡易版です。あとで加筆されます。 》
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これはかなり手の込んだ詐欺である。たいていの人は見抜けないと思うので、説明する。
まず、 2000億円から1億円へと減資するという報道がある。
→ シャープ、資本金1億円に 大幅減資で累損を一掃
→ シャープが「中小企業」に? 資本金1億円への減資検討
ここで、減資というのは、帳簿の上の処理であって、特に損も得もない。資本金は 2000億円減るが、借金も 2000億円減るから、差し引きして、トントンである。株主としては、損も得もない。ただの会計上の処理があるだけだ。
したがって、これを見ただけなら、「詐欺だ」という批判は成立しない。(勘違いしないように。)
なお、朝日には、次の解説記事がある。
全額減資ではないため、株主の持ち分や、上場などへの影響はない。
( → シャープが「中小企業」に? 資本金1億円への減資検討:朝日新聞デジタル )
実際、このあとシャープが 1000億円の利益を計上したとしたら、その利益からの配当は株主に還元される。株主が受け取る配当金は、減資の前も後も同じである。
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問題は、このあとだ。
資本金が1億円になると、ちょっとした赤字で容易に債務超過となり、簡単に倒産しやすくなる。これでは、信用がなくて、手形などの取引は無理で、現金取引しかできなくなる。銀行だって通常の融資はしてくれない。相手にしてくれる金融業者は、高利貸しだけだろう。資本金が足りないと、まったく困る。
では、どうするか? 驚くべきアイデアが実行されそうだ。
負債が資産を上回る「債務超過」にシャープが陥るのを避けるため、みずほ、三菱東京UFJの主力2行は、借金の一部を株式に転換する約 2000億円の金融支援に応じる。
( → 読売・夕刊 2015-05-09[紙の新聞] )
これが実行されると、どうなるか? 従来の株主の分は1億円。一方、主力2行の資本金は 2000億円。とすると、99.9%ぐらいの株式を、この主力2行で占めることになる!
すると、どうなるか?
たとえば、このあとシャープが 1000億円の利益を計上したとしたら、その利益からの配当は、99.9%ぐらいは主力2行に行き、残りのスズメの涙だけが既存の株主に行く。
要するに、既存の株主は、株式をすべて主力2行に奪われたのと同じ結果になる。これはつまり、既存の株主は手持ちの株式を盗まれたのも同然だ。
一方、主力2行は、貸し倒れになりそうだった 2000億円を、すべて現金で返済してもらえる! 貸し倒れになったら、2000億円のうちの一定割合は返済されなくなるはずなのに、耳を揃えて返済してもらえるのだ。たとえば、本来ならば(倒産処理で)1500億円しか返済してもらえないかもしれないのに、2000億円をすべて返済してもらえる。このことで、差額の 500億円を得したことになる。
では、それで損をしたのは、誰か? 次の二つだ。
・ 倒産した場合に返済不能な金のある融資銀行(主力2行以外)
・ 株券が無効化する、現在の株主。
この両者が、500億円規模の損失を出す。その分、主力2行は 500億円規模の利益を出す。これはつまり、500億円規模の金が
他銀行・現在株主 → 主力2行
というふうに流れる形で、損得が発生していることになる。要するに、その分、詐欺が発生しているわけだ。
ここでは、2000億円がまるまる損得になっているわけではないが、2000億円を使って 500億円規模の損得が発生するという詐欺が発生していることになる。
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このあと、加筆予定。(5月10日の夜ごろ。)
>資本金は 2000億円減るが、借金も 2000億円減る
借金は減らず、剰余金が増えると思います
>資本金が1億円になると、ちょっとした赤字で容易に債務超過となり、簡単に倒産しやすくなる
減資は純資産の部の中の科目振替にすぎず、純資産の総額は変わらないので、減資手続き後にちょっとした赤字により債務超過(純資産の金額自体がマイナスになる状態)になるというのは誤りだと思います。
ただ、減資すれば剰余金が増えて配当可能額も増えるので、同じ利益をあげれば減資前に比べて配当を増やすことで純資産がより減少するということはありえます。