箱根に黒い湯 一時変色も原因不明
火山活動が活発化している箱根山を抱える神奈川県箱根町で、避難指示区域内の大涌谷から湯の供給を受ける温泉宿のオーナーが9日、湯が一時的に黒く変色し、硫黄の臭いが強まる現象があったと明かした。8日から区域内にある温泉供給設備の整備が行えなくなっていることとの関連は不明だが、開業以来、初めての現象だという。現状で客足への影響はなく、同オーナーは「このまま穏やかに済んでほしい」と願っている。
大涌谷に近い仙石原の温泉宿「箱根温泉山荘なかむら」のオーナー・中村喬さん(83)によると、9日午後2時半ごろ、山荘内の温泉湯船を見ると、湯が黒く濁っており、硫黄の臭いがかなり強まっていた。午前中は確認されなかった。
温泉の湯は大涌谷の源泉から供給され、通常は白濁色。1982年に開業して以来、初めての現象で、中村さんは「黒くなった状態は1時間ほど続いた。今まで見たことない」と驚く。近所の宿からも「湯が黒くなった」と相談されたという。中村さんは、「源泉の水蒸気に土や灰が混じったのでは」とみている。
前日8日に、国土地理院が大涌谷を中心とした直径約200メートルの地域が最大6センチ隆起し、浅い地中で地殻変動が起きたとみられると発表。これを受け箱根町は、いったん温泉供給業者らに許可していた避難指示区域内への立ち入りを、当面は11日まで、不可とした。
このため仙石原、強羅にある旅館など約400の施設に温泉を供給する業者が、大涌谷の源泉設備で毎日行ってきた管の清掃などの整備ができなくなっている。今回の現象との関係は不明だが、湯の安定供給等への影響は心配されていた。中村さんも「温度が低くなったり、湯量が減るかもしれない」と業者から通知されていたという。最初に整備がなかった6日の翌日も一時、宿の湯量が減る現象が起きていた。
ただ、「なかむら」では客足に影響は出ていない。箱根山の噴火警戒レベルが2に引き上げられた6日以降も、予約キャンセルは1件のみで、ゴールデンウィーク中は連日、満室だった。「とにかく、このまま穏やかに済んでほしい」と願う中村さん。「源泉掛け流しの湯を楽しんでいただきたい」と快適な温泉の提供にこだわり続けながら、事態が落ち着くのを待っている。