慶應義塾大学医学部皮膚科学教室と米国 National Institutes of Health の永尾圭介博士との研究グループは、アトピー性皮膚炎における皮膚炎が黄色ブドウ球菌などの異常細菌巣(生体内に共生している菌の多様性が失われた状態)によって引き起こされることを、マウスを用いて解明した。現在ステロイド剤で炎症抑制に頼っているアトピー性皮膚炎の治療法を大きく変え、異常細菌巣を正常化させて皮膚の炎症を沈静化させるための、新しい治療戦略の開発を促す重要な基盤となることが期待されるという。
アトピー性皮膚炎は小児から成人によく見られる疾患で、気管支喘息や食物アレルギーに発展し得ることから、一般的にはアレルギー性の疾患であると理解されている。しかし、皮膚局所の炎症が起こる原因は、現在まで解明されていない。一方で、アトピー性皮膚炎患者の皮膚では、黄色ブドウ球菌が多数存在していることが40年以上前から知られていたが、これがどのようにアトピー性皮膚炎の病態に関わっているかは不明だった。
今回研究グループは、アトピー性皮膚炎のマウスを作成し、マウスに皮膚細菌巣を培養した。その結果、生後4週より黄色ブドウ球菌が大量に検出でき、最終的には黄色ブドウ球菌などが皮膚細菌巣を支配することがわかった。さらにアトピー性皮膚炎マウスを、異常細菌巣に効く抗生物質2種類で持続的な抗菌治療を行う群と、10カ月で治療を止める群に分けて調べたところ、前者はほぼ皮膚炎が治癒したのに対し、後者は激しい皮膚炎を発症した。
この研究により、アトピー性皮膚炎マウスの皮膚炎は、偏った異常細菌巣によって起きることがわかったという。しかし、今回の研究で実験手法として使用した抗生物質治療は、腸内細菌への悪影響もあるため、臨床の現場でのアトピー性皮膚炎の治療法としては推奨できないとし、今後、抗生物質に頼らない正常な細菌巣を誘導する方法の検討が行われることを期待するとしている。
この研究成果は4月21日(米国東部時間)に米国科学雑誌「Immunity」電子版で発表された。論文タイトルは、「Dysbiosis and Staphyloccus aureus Colonization Drives Inflammation in
Atopic Dermatitis」(皮膚細菌巣バランスの破綻および黄色ブドウ球菌の定着がアトピー性皮膚炎の炎症の原因となる)。(町田光)
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