BNP河野氏:財政支出が物価上昇に貢献-金融政策は限定的
2015/04/10 08:50 JST
(ブルームバーグ):BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは2年前の量的・質的緩和導入後の物価上昇に貢献したのは10兆円規模の2012年度補正予算の執行で、金融政策の役割は追加歳出に伴う金利上昇の抑制にとどまったとの見解を示した。
河野氏は3日、ブルームバーグとのインタビューで、インフレ率の改善の主因について「10兆円を超える12年度補正の効果が大きかった。GDP(国内総生産)で2%強の政策を執行したので、13年度の成長が2.1%になったのは当然ともいえる」と指摘した。その上で、「追加財政に伴う金利上昇圧力を大規模な国債購入で相殺したというのが日銀の貢献。主は財政で、金融緩和は従だ」と分析した。
河野氏は13年4月の消費増税や原油下落などの要因を除いた生鮮食品を除いたコア消費者物価(CPI)はマイナス0.6%だったが、今年4月はプラス0.5%と見込んでいる。この1.1ポイントの改善のうち円安の影響は0.6ポイントと試算。残る0.5ポイント弱が、財政出動による需給ギャップ改善の影響とみている。
「円安を促したことが量的・質的緩和の最大の功績」としながらも、「欧州のソブリン危機時にユーロ売り円買いのポジションが積み上がっていたが、危機が収束し円安が始まった。12年末から経常収支の赤字も散見され、貿易収支もかなり悪化していた」と述べ、「すべてが金融政策の効果だったわけではない」と分析した。
完全雇用さらに、「13年末から14年初めにかけて日本経済が完全雇用の領域に入り、潜在成長を超えて大きく成長できなくなった」ことから、「円安が進み、インフレも上がったが、輸出が全く改善せず、家計の実質購買力を抑制し消費の低迷を引き起こした」と指摘した。
13年度に効果を発揮した財政政策も「14年初めから労働者不足で公共投資が実行できない状況になり、13年度補正予算がうまくいっていない。運輸業や小売業も人が集まらなくなった」とし、完全雇用下で追加歳出が景気刺激効果を発揮できない事態に陥ったという。
その上で「14年初めの段階で経済が完全雇用になったのであれば、財政政策や金融政策の手じまいを検討すべきだった。10月には追加緩和をし、再び14年度補正予算を策定する誤った政策を行った」と批判。追加緩和による円安が原油安のメリットを相殺した副作用も指摘し「悪い政策は早くやめた方が良い」と述べた。
出口政策河野氏は金融緩和が財政規律の弛緩につながる副作用も指摘する。「議会制民主主義の下で、財政膨張の唯一の歯止めは長期金利の上昇」としながらも、「政府は金利を抑制している日銀の国債購入に頼り、財政健全化が進められない。それ故に日銀が利上げできない負の連鎖だ。インフレが起こっても永遠にイグジットできない」懸念する。
河野氏は出口政策の条件として政府による財政健全化を挙げる。注目されているのは政府が今夏までに策定する財政健全化計画だ。河野氏は20年度の基礎的財政収支の黒字化には消費増税で換算すると16%から19%程度の税率が必要と試算する。しかし、安倍晋三首相は10%以上の消費増税は検討しない方針を表明した。社会保障関係費などの歳出削減も難しく、信頼に足る計画は期待できそうにないとみている。
金融政策の次の手段については、日銀による80兆円の国債購入が難しくなることから、「現行のマネタリーベースを長期金利ターゲットに移行するのではないか」と予想。「財政破綻を避ける意味で、長期金利の抑制が日銀にとって重要になる。これだけ国債を保有していれば金利はほぼコントロールできる。来年以降、あり得る」と説明した。
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更新日時: 2015/04/10 08:50 JST