艦これ運ゲー論は飽きた。飽きたんだ。
いい加減このメビウスの輪から抜け出したい。
「運ゲー」という言葉は広い。そんな言葉の定義論をやってあってるの違っているの言ってもしょうがない。大事なのは、間違いなく侮蔑の意が込められている「運ゲー」という言葉を、何が叫ばせているか、だ。
>>何をしても無駄。できることなんて無い。せいぜい祈るだけ。ああ運ゲー運ゲー。
>>おいちょっと待てそんな言い様はないだろう。
この争いが13年秋から延々と続いている。もう飽きたんだ。そのたびに説明するのもうんざりだ。だからここにまとめておく。
ランダム要素が結果に絡む
入力に対する出力がどうしたって安定しない
ある成長要素がある、CPU相手のゲームがあったとする。
Lvがカンストしたユニットだけで全ステージを挑戦しよう。そうなった。
全く同じプレイングをしているのに結果が一定しない。さて、こういうゲームは結果に対してランダム要素が強く絡むと言える。普通このようなことが起きることはまず無い。Lvがカンストしていればプレイングが同じなら同じ結果。つまり、プレイングを間違えなければ結果は常に勝利だろう。受けるダメージは0、与えるダメージは高く、2,3ターンで終了。そういうものだ。これが普通のゲーム、この結果が常に敗北なら、バランス調整に失敗したクソゲーと誹られる事になるだろう。
さて艦これはどうだろう? Lvカンスト編成で延々と一つの海域を攻略したとする。100%完封できる? そんなわけはない。だって1-1でLvカンスト艦が外したり小破するんだから。キラ付け作業の時に散々カスダメを食らって攻撃を外す自分の艦娘に目を覆った人は少なく無いだろう。
「なあ、頼むから、Lvカンストしてるんだから結果は確定させてくれよ」
そう思うのは人情だろう。ただここでそう聞いた中で、「それ、面白いか?」と思った人がいるかもしれない。そんなあなたは、別に間違っちゃいない。
結果がわかりきっていると、作業になる
信長の野望。全国の半分以上を取った中盤以降のダルさ。このダルさは信長の野望プレイヤーにはおなじみだろう。だいたい戦国の群雄を配下に収めたら特にやることはもう無いのだ。武田家臣団と織田家臣団が揃ってガンパレード・マーチを始めればもう終わったようなものだ。ここからエンディングに行かず終えてしまう人もいるだろう。Lvがカンストしているユニットと言うのは織田、武田家臣団のようなもので、これ出しゃ何したって勝てる。もう結果は見えている。後はAIに任せて本でも見ておこう。
スーパーロボット大戦で育ちきったアムロが雑魚を相手にする。もう戦闘シーンはカットだ。飛ばしてしまおう。なんでって、わかりきった結果は面白くない。それの繰り返しとなると、もう本当に面白く無いんだ。
実際の戦争をモチーフにしたゲームの抱える「ランダム要素」への憧憬
実際の戦争をモチーフにしたゲーム開発者はしばしば結果にランダム要素が強く絡む「ウォーゲーム」を視線の端に捉えることとなる。
「ウォーゲーム」ってなんぞやと問われると、元々は実際の軍隊における「机上演習」をもう少し簡略化して娯楽にしたものだ。当たり前だが、「机上演習」。つまり実際の戦争を想定して、「練度(Lv)が高い兵は必ず勝利する」と言う想定はまず立てない。
そりゃ、何があるかわからない。「伊勢」の新米艦長が、米機動艦隊の攻撃をことごとく回避する指揮を取ってみせる。なんていうことが実際にあるように、ぽっと出の敵指揮官がヤン・ウェンリーだったからこちら側の練度(Lv)が高い軍が全滅しました。なんてことが実際あるものだからどうしようもない。ましてや演習である。「そんなこと、ありえない」と高をくくるわけにも行かず、不測の事態も想定する必要がある。だからダイスを振る。機動部隊が全滅しても、主力艦が沈んでも。
だってしょうがないじゃないか。
「米空母を沈めようとしたら流れ魚雷が戦艦と駆逐艦に当たりました」だとか
「天候のせいで飛行場空襲が遅れたら、敵防空機が給油のために降りてて大戦果」だとかあるんだから。
よっぽどありえない事象でも起こらない限り、胃に穴開けながらダイス振るしか無い。そして実際の戦争をモチーフにしたゲームをしたい人は、ただ船や兵を操りたいわけではない。上記のような戦記譚、つまりどこかで、こういう「物語」を欲している。
ランダム要素が生む「物語」
TRPGはなぜダイスを振るのか
物語がほしいからダイスを振る。
強キャラが無双するのは面白く無い。
パラメータが高いキャラは必ずうまく行く。弱キャラそこのけ強キャラ通る。そこに一期一会の、再現不可能な、奇跡のような物語は生まれない。
強キャラがボスに放った止めの一撃。ダイスを振った! ピンゾロ……ファンブル(大失敗)。プレイヤー同士が顔を見合わせ、ゲームマスターも目を点にする。そんな状況、胃は痛いかもしれないけど、きっとすごく楽しい。終わった後反省会はきっと大盛り上がりだろう。忘れられない物語が生まれたのだ。ランダム要素がなければ、きっとこんなことはなかったはずだから。
「物語」を生むゲームは、やめられない止まらない
ランダム要素が結果に絡むと、どうしてこんなに面白いのだろう。
風来のシレン。盾も剣も上質なのに、おにぎりが一向に出ない。草を食いつなぎ、ぴーたんを追いかけて腹を減らし落とし穴に落ちて。いつものプレイングをしているのに、どうして今日はこんなシビアなんだ、あ、餓死した。プレイしたことがあるなら、誰しもがある話だと思う。ここでお前のプレイングが悪いと言い切るのは危険である。だっておにぎりがかならず出る入力はないのだから。おにぎりを落とす敵が出ますように、おにぎりが出ますように、そう祈りながらプレイングでひとマスひとマスを生き伸びるしか無い。
これがやはり、最高に楽しい。
女神転生もやはり事故死がないと張り合いがない。こうでないと。そして何度も何度も同じゲームを周回する。だから皆未だにスーパーファミコン初代風来のシレンを楽しく遊べる。腕が鈍ったって磨いたって、変わらずそこに物語はあるんだから。
ランダム要素のいいところはここだ。入力が出力を確約しないということは、腕のあろうとなかろうと、「物語」が成立する。
「物語」はゲームの外へ
スタンドアローンのゲームというのものは大体一人で黙々とやるものだ。もし外で話すとしても、あの話は良かった、あのキャラ可愛かった、とゲームそのものの話か、せいぜい攻略についてとなる。
「物語」のあるゲームはそれだけにとどまらない。あそこでああだったの、ああいうことが起きたの、「物語」を持ち込んで話題が広がる。シレンなら「スーパーゲイズ」と一言言えば、集まったプレイヤーそれぞれの悪夢にも似た思い出が蘇る。「真・女神転生3で全滅したら上がってくるスレ」が伸びるのも、それぞれの「物語」を語りたいのだ。
艦これがSNSと結びつき、それぞれの物語が生まれた
忘れられない事がある。
13夏のイベントのことだ。最終海域、ゲージは削りきった。後はボスを沈めるだけ。でもちっとも沈まない。何度も撤退し、資源もほぼ尽きそうになった。当時は効率のよい遠征も無く、尽きればギブアップだった。
そこで私は天龍をいれた。
ドロップした時から惚れ込んで、ずっと旗艦で使ってきた。パラメータは皆さんご存知のように軽巡中最低の旧式艦。そもそもメインに入れるような艦娘ではない。でも惚れ込んでるんだからしょうがない。だから彼女を旗艦に入れて、それでダメなら諦めよう。そう考えた。
その彼女を旗艦にして二回目のトライ。夜戦でカットイン一発ボス撃破を果たしてくれた。
はっきり言ってランダム要素の産物であるのだが、それでも大変嬉しかった。それぞれの提督がこの手の自分だけの「物語」を持っているだろう。
SNSはそういう物語を語るには適切な場だった。絵だったり、スナップショットだったり、「俺の艦娘がやってくれた」と盛り上がり、「物語」を語る。だからこそ艦これは、楽しかった。
運が良ければ勝てるから、運が良くなければ勝てないへ
決定的になったのは13秋以降。いや、先行雷撃が生まれた13夏からほころびは始まっていたのかもしれない。
艦種縛り、装備縛り、ダメージを計算すれば雷巡じゃないといけない。次から次へと海域をクリアするためには条件が積み重なる。
- 制空を取らなきゃいけない
- 先行雷撃はできなければならない
- 索敵値を上げないといけない
- 最終的な火力は高くないといけない
- 水偵積めないといけない
- ダメコンは積めない
- etc...
烈風箱で艦隊枠を潰して、雷巡がボスまで大破しないことを祈る。雷巡より安定を取るなら大和型か。空母棲姫の素の火力180はあらゆる艦種を一発大破する。それでもまだ大和型のほうがマシか。とりあえず考えられる脳筋編成を組んで、後は良い目が出るまで繰り返す。ひたすらサイコロを転がす作業だ。また一発大破撤退だろう。わかりきった結果は面白くない。それの繰り返しとなると、もう本当に面白く無いんだ。あれ?
作業を消すはずのランダム要素が、作業を生んだ
難易度、という名の失敗
どうしてこうなった。
結果がわかりきったら作業になって面白く無い。結果にランダム要素を絡ませれば作業は消え「物語」が生まれる。でも、サイコロを転がすだけの作業になってしまった。
どうしてこうなった。
簡単だ。「難易度」と称して、ただ敵を強くしてしまった。調整の失敗。作業を生む「強いユニットは、必ず勝つ」が入ってしまった。空母棲姫に睦月型どころか大体のユニットはまず勝てない。敵より自分たちが弱い。その結果がわかりきって、なおかつその中で良い目を引いてようやく勝てる。
ボスを集中攻撃すれば、終わるのに。
良い「物語」を生むはずのランダム要素が、悪い「物語」を生んだ
提督たちは自分たちの艦娘は馬鹿なんじゃないかと言う物語を持たざるを得なくなった。何でお前は1-1の駆逐艦にダメージを食らっているんだ。何でお前たちはボスを狙わずどうでもいい食べこぼしを狙うんだ。
今まで物語を生んでいたシステムが噛み合わなくなってくる。
生むのは愛すべきはずの艦娘へのヘイトだ。何も指令できないんだから仕方ない。良い「物語」は消え失せ、艦娘が愚かであるという悪い「物語」ばかりが積み重なる。ああ、これは作業だ。しかもやってればいつかは終わる作業じゃない。いつ終わるかわからない作業だ。なんということだ。何よりそのいつ終わるかわからない作業を終えなければ、艦隊はこれくしょんできないのだ。
そして叫ぶのだ。
「運ゲーだこれ!」
そして夢から醒める
定義論は避ける。
この場合の運ゲーとは、こういうことだ。
「いつか終わる作業」を超えた、「いつ終わるかわからない作業」。モノポリーの刑務所だって三回目で出られる。いつか終わるったってダルいのに、いつ終わるかわからないなんてもうどうしたらいいんだ? ダイスの目が揃うまで? ああ、運だ。
そりゃそうなる。
こうなったら、運営を怒るしかない。もっとちゃんと調整しろと。そうしか言いようが無いんだ。もう一度あの海を返してくれと。
しかし上記のように「いつ終わるかわからない作業」へとシステムが積み重なっていく。
嫌ならやるな? やらなきゃ艦隊がこれくしょんできないんだ。
嫌ならやめてしまえ?
うるさい。私は天龍ともう少しこの海に居たいんだ。