米国のスタートアップ Meld が、既存のガスコンロやIH調理器具に取り付けて火力・温度の自動調節機能を追加する製品 Meld Knob + Clip を発表しました。
Bluetooth LE対応の動力式交換ノブと電子温度計、iOS / Android対応レシピアプリがセットになっており、料理の温度に応じて内蔵モーターがノブを回して火力を調節することで、完璧な調理に必要な温度や時間を自動的に管理します。
Meld Knob + Clip のユニークな点は、既存の調理器具の火力調節つまみに取り付けることで、ガスコンロでも電熱器でもIHクッキングヒーターでも自動化できること。またBluetooth LE対応の高精度温度計を鍋などに取り付けて連携すること。
調理中の素材の温度を監視して小刻みに火力を自動調節できるため、たとえばチョコレートのテンパリングなど、細かな温度管理が必要な作業もアプリから温度と時間を設定するだけで調節してくれます。
既存の調理器具のつまみを Meld Knobに交換した後も、手でひねって従来どおりに使うこともできます。
iOS / Android向けに用意されるアプリはこのMeld Knob + Clip と連携するため、一般的なレシピでは「強めの中火で10分から15分」のように曖昧な表現のところを、材料の種類や量、調理方法に応じた正確な温度と時間に変換して多数収録します。
Meld Knob + Clip を開発したのは、かつてPinterestの開発部門責任者を務めた Jon Jenkins氏と、iOS用の真空調理法(Sous Vide)アプリで受賞歴のあるエンジニア Darren Vengroff氏。
Jenkins氏はPinterestの前はアマゾンに9年間在籍して Kindle Fireタブレットなどの開発に携わり、そこで同僚であり調理技術の現代化を目指す同志である Vengroff 氏に出会ったとされています。
Meld + Clip の開発が始まったのは2014年5月。すでに実働するプロトタイプは完成しているものの、市販化に向けた量産資金を Kickstarter で募っています。出資額と成功時の見返りは、先着250名限定の早い者勝ちコースが Meld Knob + Clip 一式 で99ドル。ただしすでに品切れ。標準では一式129ドル。出荷は世界対応。
目標5万ドルの調達キャンペーンは開始したばかりですでに7割ほどに達しているため、一か月後の締め切りを待たず成功しそうな雲行きです。このまま資金調達に成功し、かつプロジェクトが問題なく進んだ場合、出資者には2015年秋から Meld Knob + Clip が送られる予定。その後は一式150ドルで一般向けにも市販する計画です。
開発者の掲げる料理の現代化、不要な当て推量を排してもっと多くの人が料理を楽しめるように、人が技を発揮すべき部分に集中できるように、との目標も立派なものですが、それを高価な最新調理家電ではなく、アナログも良いところの既存ガスコンロと、外付けセンサや動力式コントローラ、モバイルアプリの後付けで実現するのがすばらしいところです。感覚器と手と頭脳が分離しているだけで、既存の調理設備を使う料理ロボットに近い発想といえるかもしれません。
なお火や熱を使う調理器具の自動コントロールと聞いて気になる安全性については、最初の点火や調理器具の電源は人間が操作する必要があること、逆に調理終了後はMeldが自動的に消火するため消し忘れがないことなど、開発者はむしろ従来より安全になる点を示しています。