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■ユニ・チャーム フード事業部長 稲葉洋恵さん(49)

 お皿に盛られた粒状のドッグフードを口に入れる。肉や魚といった素材の味は生かされているか。硬すぎず、軟らかすぎないか。ペットフード事業の責任者として味をチェックするため、自ら試食を重ねる。

 おむつや生理用品など衛生用品大手のユニ・チャームが、ペットフードに参入したのは1986年のことだ。業界では後発だった。96年、企画管理部門からペットフードのマーケティング担当になった。衛生用品とは畑違いの商品の担当に戸惑いも覚えたが、もともとイヌやネコは大好きだった。

 開発を主導した商品はこれまでに30種類超。イヌやネコの飼い主の家庭を訪ね歩き、ペットとの生活についてじっくり話を聞き、商品の開発に役立てる。話を聞いた飼い主は3千人以上、新商品のペットフードはすべて食べてみる。これまでに試食した数は4千食以上にのぼる。

 担当になった当時、ペットフードは大きな袋に入れて売られていた。当時人気があったのは、シベリアンハスキーやゴールデンレトリバーなど、大量に食べる大型犬だったからだ。

 だが、モニターをお願いしている飼い主の話を聞くと、事情は少し違っていた。「太りすぎて困る」「好き嫌いが増え、食べる量が減った」。尿管結石など人間の成人と同じ悩みを抱えるペットが目立った。