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【もう一人のあなた 嘘の構図(1)】
「10年前、人を殺しました」悪夢にうなされた男の告白 コンプラ社会から噴き出す負の本性「そんな正直な人間はおるんか?」
《突然、知り合いの男性の顔が現れた。ニコリと笑ったかと思うと、今度は真夏の夜の河川敷に立つ自分がいる。足元には深い穴。突き落とされたその男性は、顔や手足を粘着テープでぐるぐる巻きにされ、大量の土砂がかぶせられると、もがき、はい上がろうとする…》
目が覚めた。夢だった。金縛りの感覚が残った体は、汗だくでうまく動かない。口脇由英(よしひで)(53)=強盗殺人罪などで無期懲役確定、受刑中=は繰り返される夢にいよいよ耐え切れず、隠し続けてきた“秘密”を打ち明けた。
「10年前、知人の男性を殺して金を奪いました」
■ ■ ■
平成16年夏、大阪府枚方市の淀川河川敷でホームレス生活をしていた口脇は、仲間の男(46)らと、同じホームレスの男性を河川敷に生き埋めにして殺害し、現金100万円を奪った。当初は罪悪感もなく、その後も同じように河川敷に暮らしていた。事件の記憶は次第におぼろげになり、分け前の40万円を何に使ったかも忘れていた。
ところが2年後、忘却の底から記憶が夢となって現れた。金縛りは長時間続き、眠ることも怖くなった。男性が近くに埋まったままだと思うと足が震え、月に何度か、線香代わりにたばこを供え「誰か見つけてやってくれ」と願った。
だが、事実をひた隠す「嘘」に疲れ果ててもなお、告白する勇気はなかった。自首しようと警察署の周りをぐるぐると歩いたことも一度や二度ではない。
踏ん切りがついたのは昨年5月、車を盗んだ疑いで大阪府警に逮捕されたことだ。取り調べが始まった直後、背中を押されるように唐突に打ち明けた。
今年3月、大阪拘置所で面会に応じた口脇は穏やかな表情をしていた。夢はもう、見なくなったという。
■ ■ ■
人生で嘘が無縁の人はいないだろうし、少なからず秘密も持っているだろう。ただ、多くの人はとりたてて「もう一人の自分」を意識しない。
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