北朝鮮では目下、国民を外の世界から隔離しようとする政府の思惑とは裏腹に、約50ドルの携帯メディアプレイヤーが多くの国民に外界への窓を開いている。世界で最も抑圧された社会の1つとされる北朝鮮の変化を象徴する動きと言えそうだ。
「notel」と呼ばれるこの小型のポータブルメディアプレイヤーはDVDやUSBメモリに保存されたコンテンツの視聴に使うことができ、一部の推計によると、北朝鮮の都市部では半数近くの世帯に普及しているという。notelはサイズが小さいので、隠しやすく、密輸も簡単で、人の手から手へと渡っている。
北朝鮮からの脱北者や活動家、北朝鮮を最近訪問した人たちなどによると、北朝鮮では最近、韓国製の石けん、ポップミュージック、ハリウッド映画、ニュース番組など、政府が明確に禁じている各種の物品が出回っているという。
「北朝鮮政府は国家イデオロギーを非常に重視しており、自らのプロパガンダに反するこうしたメディアの拡散は政権にとって大きな問題となりつつある」と、脱北者支援を行う人権団体Liberty in North Korea(LiNK)のソキール・パク氏は指摘する。
「政府がこうした流れにうまく対応できなければ、政権の長期的な存続が脅かされかねない」と、同氏は続ける。
北朝鮮の人たちは以前よりも堂々とお金を使うようになってきており、これは、ある種の企業家精神が徐々に許容され、当局が厳しい経済統制を緩めつつあることの兆しとも考えられる。ここ数カ月で、顕示的消費もより活発になっている。
「地元の人たちがお金を使う場所が、種類も数も本当に増えた。人々は消費に対して以前よりもずっと自信を持っているようだ。携帯電話に平気で500ドルを出す人もいる」と、平壌をよく訪れるという匿名希望の人物は語る。
ただし、核保有国北朝鮮の政権が手綱を緩める兆しはなく、大幅な改革を目指したり、外部世界への予測不可能な対応を改めたりといった兆候もみられない。
だが貧困にあえぐ北朝鮮においても、所得の上昇に伴い、より多くの物品が出回るようになってきている。その大半は闇市場で取引されているが、一部は国営の店舗でも扱われている。
notel(またはnotetel)という名称は「ノート」と「テレビ」を組み合わせた造語。notelは闇市場では約300中国元(48ドル)で数多く出回っているほか、国営の店舗や市場でも手に入る。
韓国ソウルで脱北者が運営するニュースサイトによると、北朝鮮政府は昨年、notelを合法と認めたという。この件も含め、同政府は近年、国民の変化に対応するための方策を各種打ち出している。
ただし新しい規則では、notelの所有者には登録が義務付けられ、禁止されている海外メディアを視聴している可能性の高い人物を当局が監視できるようになっている。
北朝鮮市民はインターネットにはアクセスできず、オンラインにアクセスできるとしても国営のイントラネットに制限されている。また同国の250万人の携帯電話ユーザーは国外への通話を禁止されている。
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