震災当時を思い出すのが辛い

村上さん、こんばんは。
今は名古屋に住んでいますが、以前は兵庫県にそして阪神大震災の時は神戸に住んでいました。
今年は阪神大震災から20年と言うことで新聞もテレビも特集をたくさんやっていました。今年は神戸で1月17日を迎えました。

家が全壊して生き埋めになりましたが、家族が亡くならなかったですし、家も古くてローンもなかったですし、家族だれも失業しませんでした。そういう意味で被災者と言って良いのか? と思っています。なんだか申し訳なくって。

それなのに、震災の特集をテレビで見ると非常にしんどいです。震災当時よりしんどいです。震災当時は倒れた高速道路を見ても笑ってしまいました。壊れた街を見ても普通のことと思ってました。あの頃の方が精神的には楽です。

普段の生活に慣れすぎているから、震災当時を思い出すのが辛いのだと思います(なので、東北大震災の震災の遺産を残すことには反対です)。

もう20年だし、もう精神的に立ち直りたいのですが、どうすれば立ち直ることができるでしょうか? 
あまり震災の事に接しない方がよいのかな? と考えるときもあります。

よろしくお願いします。
(かおべえ、女性、46歳、専業主婦)

ケースは違いますが、今年は地下鉄サリン事件の20周年でもあり、テレビで多くの特別番組が組まれました。僕も事件にある程度関わっていたものの一人として、そういうのを見なくちゃなと思って見ていたのですが、途中から気持ちがずんずんと落ち込んできて、胸が痛くなり、とても見続けることができませんでした。そういうのって、むしろ時間が経てば経つほど、きつくなってくるかもしれません。不思議ですね。あなたの気持ちは僕なりによくわかります。無力感というか。

どうすれば立ち直れるか? それは僕にもわかりません。そういう風景を心の隅に抱えたまま、日常を普通にしっかり生きていかれるしかないと思いますよ。

村上春樹拝