トヨタ自動車の強さの源泉、トヨタ生産方式を取り入れる企業が相次いでいる。リーマン・ショックや東日本大震災を乗り越えて、2015年3月期に営業最高益を更新する見込みのトヨタは、日本企業の業績回復を象徴する。自動車だけではない。トヨタの現場力を学ぶ企業が15年度に飛躍する足場を固めている。
ゲームの世界で年間2万~3万枚のイラストを安定供給する。量をこなしながら、品質と締め切りを守る仕事ぶりが、ゲーム会社から評価されて注文が続く。ゲーム用イラスト制作のムゲンアップ(東京・新宿)の一岡亮大社長は「年間のキャラクターの数はギネスに申請したいほど、今年も2倍のペースで受注している」と淡々と話す。
■絵を流れ作業で
業界でイラストはクリエーティブな仕事という意識が強く、管理が難しい。常識を変えたのがトヨタ生産方式だ。イラストの制作にきめ細かな工程管理をあてはめた。
ムゲンアップはインターネットを通じて個人のクリエーターに業務を委託する「クラウドソーシング」でイラストを大量に制作する。「ラフ」→「線画」→「塗り」→「背景」と作業工程を区切り、分業体制を敷く。
登録している約2万7000人は、それぞれ能力と個性が異なる。スケッチは得意だが、色を塗るのは遅いなど、力量を見極めて実績をデータ化しておき、納期から計算して発注する。本社のディレクターがチャットを使い指示を出し、問題を解決しながら進める。
一岡社長は28歳。11年にムゲンアップを設立した。銀行で働いていた時、取引先の金型メーカーの現場を見てヒントを得た。イラスト制作は自動化しにくく、オーダーメードスーツを量産するようなもの。「一見ものづくりから遠いが、労働集約型という点で近い部分もある」と一岡社長。
会社を設立当初、壁に手書きの工程表を張り出し、進捗状況を見えるようにして共有した。問題が起こると作業を止めて原因を突き詰めた。受注が膨大な今、システムはパソコン内に収まったが、方法は変わらない。
■欠品をゼロに
「生産管理部はいらない」。穀物加工のはくばく(山梨県富士川町)の長沢重俊社長は言い切る。14年は主力の麺類で客の注文に応えられない欠品をゼロにした。指南役はトヨタ自動車で経験を積んだコンサルタント、鈴村尚久氏だった。
はくばくはそうめんなど乾麺や麦茶が主力品。夏は冬の10倍近く出荷する季節商品だ。生産量は営業の販売予測を生産管理部が集計して工場に送り、工場で在庫を見ながら「鉛筆をなめて決めていた」(長沢社長)。
「数百ある商品の販売予測なんて、競馬で1着から16着の順位とそれぞれの差を当てるようなもの。不可能です」。鈴村氏の言葉に長沢社長は思わず膝を打った。返品された商品が積み上がった光景が目に浮かんだ。
400品番を生産する麺類。かつて4~8月の欠品が600件に上る一方、8月末時点の在庫は600トン。欠品が怖くて在庫を積むと、コスト負担は増す。それでも欠品は減らない悪循環となっていた。
「必要な在庫を持ち、出荷されたら、その分をすぐ補充する」。在庫に商品補充カードを付けておき、出荷されるとカードが工場に持ち込まれて生産が指示される。トヨタのかんばん方式だ。
トヨタ、トヨタ生産方式
トヨタ自動車の強さの源泉、トヨタ生産方式を取り入れる企業が相次いでいる。リーマン・ショックや東日本大震災を乗り越えて、2015年3月期に営業最高益を更新する見込みのトヨタは、日本企業の業績回復を象徴…続き (4/5)
ある日、締め切りが終わってぼーっとしていたらデスクに話しかけられた。「なんかさ、コニカミノルタの印刷機で洋服作れるんだって?」。インクジェット布地印刷機のことか。印刷機なので洋服までは作れないが、好…続き (3/29)
2020年の東京は、オリンピックやパラリンピック、そして社会全体を通じてロボティクス応用の先進事例を発信する場になりそうだ。健常者を超える義足のアスリート、新しい競技への可能性、大会の演出から警備、…続き (3/28)
各種サービスの説明をご覧ください。
・NEC世界に挑む(上)
・VBの地方創生、中小企業の情報発信支援
・OKI、雑音排し狙った音抽出
・花王、空調倉庫の電力4割削減
・IHI、レーダーで交通事故防ぐ…続き