村上先生こんにちは。私は小説を書いています。文学新人賞に応募して、一次審査は受かります。二次審査も、時には三次も。しかし最終的には落ちます。小説家になりたい訳ではないが小説を書き続けないと生活に支障が出る(極度に機嫌が悪くなるとか体調が悪くなるとか)人間にとって、小説を書くということはどう捉えていったらいいのでしょうか? この因果というか、書かねばならない感じに自分でも辟易しているのです。小説に時間を取られて生活に支障が出るが、書くのをやめればまた支障が出て、苦しいです。 創作とは何なんでしょうか。尊敬する村上先生のご意見を頂けたら幸いです。
(にゃをこ、女性、34歳)
僕はあまりそういう風に、小説を書くことに呻吟したという覚えがありません。いつもわりに楽しく小説を書いてきたと思います。「書かねばならない」と思ったこともありません。書きたいから書くんです。
もちろんあなたの小説を書いているのはあなたですから、あなたの好きなことを好きなように書く権利があるわけですが、でも少し視点を変えて「書きたいから書くんだ」と思うようにされてはいかがでしょう? 肩の力が抜けて、意外に良い感じになるかもしれませんよ。
誰もあなたに「小説を書いてください」と頼んでいるわけではありません。だったら、自分が小説を書くことを楽しめばいいじゃないですか。自分の考えを自分の言葉にできるというのは、何はともあれ素晴らしいことです。自分にそれができることを喜ばなくちゃ。
村上春樹拝