1960年代に大ヒットした科学玩具「地球ゴマ」。大正時代に創業した名古屋の町工場で94年間作り続けてきた。職人の不足と高齢化の状況下、社長の後継者もなく、会社継続を断念した。
回転しながら綱渡りをしたり、ペン先に立ったりする。タイガー商会はそんな科学玩具「地球ゴマ」一筋で、1921(大正10)年から作り続けてきました。私自身、50年以上、職人として地球ゴマの製作に打ち込んできました。
ですが、ついに力尽きました。創業から今年で94年。何とか100周年までは頑張ろうと思ってきましたが、このたび廃業せざるを得ない状況になりました。社長の後継者がおらず、職人も高齢化して技術の伝承ができない。
工場長として懸命に現場を率いてきましたが、残念ながらこれ以上、会社を継続することは限界でした。
60年代、空前の大ヒット
タイガー商会の創業者である加藤朝次郎氏はもともと、時計メーカーの技術者でした。働きながら何か自分で商売ができないかと考え、時計のコマ状の部品に目を付け、地球ゴマを独自に開発しました。それが大正10年です。
地球ゴマはジャイロ効果を応用した科学玩具です。ジャイロ効果とは物体が高速で自転回転していると、外部から力がかからない限り、回転軸の向きが一定方向に保たれる現象です。水平方向と垂直方向の2つの円形フレームの中に円盤と軸からなるコマがあります。このコマをひもで強く回すと地球ゴマ全体が安定するため、ペン先で回し続けたり、動いているほかの地球ゴマの上に載せたりと様々な遊び方ができるのです。