(英エコノミスト誌 2015年4月4日号)

世界の巨大都市では土地が有効に活用されておらず、多大な損失を招いている。

西半球一の眺めはいかが?ニューヨーク

米国の都市部の成長を阻む障壁をすべて撤廃したら国内総生産(GDP)が6.5~13.5%増加する可能性があるという(写真はニューヨーク・マンハッタン)〔AFPBB News

 米国の作家、マーク・トウェインはかつて、「土地を買え」と忠告した。「新しい土地が作られることはないから」というのがその理由だった。しかし現実には、土地は特に希少なものではない。米国の全人口はテキサス州の面積に十分に収まるはずで、その場合でも各世帯には1エーカー(4000平方メートル強)以上の土地が行き渡る。

 土地の価格が跳ね上がっているのは、ロンドンやムンバイ、ニューヨークといった大都市で、旺盛な需要に対し土地の供給が限られており、需給のミスマッチが起きているためだ。

 過去10年間に、香港の土地の実勢価格は150%上昇した。ロンドン中心部のメイフェア地区にある住宅物件の価格は、高いもので1平方メートル当たり5万5000ポンド(8万2000ドル)に達する。マンハッタンの住宅地1平方マイル(約2.56平方キロメートル)の価格は、165億ドルだ。

 ここに挙げたような大都市においてさえ、こうした土地の希少性は人為的なものだ。建物の高さと密度に関して規制が設けられており、これが供給を制限し価格をつり上げているのだ。

土地の希少性のウソ

 ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)の研究者が先ごろ行った分析によると、ロンドンのウエスト・エンド地区では、土地活用の規制がオフィス物件の価格を約800%膨らませている。ミラノやパリでも、こうした規制が約300%も価格を押し上げているという。

 土地の所有者は莫大な価値を手にしているが、その大部分は、競争によってこれらの利益を吹き飛ばすような新しいオフィスの建設がほぼ不可能なことにより生じているものだ。

 不動産市場におけるこうした機能不全の代償は非常に大きい。それは主にこの負担が個人にのしかかるためだ。住宅価格が高いため、労働者は価格は安いが生産性の低い場所に住むことを強いられる。ある研究によると、サンフランシスコ付近のベイエリアの雇用は、仮に厳しい建築規制がなければ、現状と比べて5倍の規模になっているはずだという。