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SNSで広がった衝撃のスピーチ。世界で最も貧しい大統領が語った、本当の豊かさとは?

世界で最も貧しい大統領と言われていた、南米ウルグアイのホセ・ムヒカ元大統領をご存じだろうか?彼は給与のほとんどを寄付し、個人資産は18万円相当の車1台のみで、農場で質素な暮らしをしている、とても珍しい人だ。

そんな彼が、2012年に開催された世界の環境と開発について議論される「リオ会議」で行った勇気あるスピーチは伝説になった。今まで誰も気が付かなかった、いや見て見ぬふりをしてきたのかもしれない環境問題の核心に触れ、現代社会に対して警鐘を鳴らした。ここまでハッキリと今の世界を批判できる人が、かつて存在しただろうか?

彼は、私たちが真の豊かさを手に入れるにはどうすべきかも語っていく。彼の熱いスピーチに感銘を受けずにはいられないはずだ。

彼のスピーチをざっくり3つにまとめると、

1 経済のために使い捨てばかりのモノをつくり、大量生産・大量消費の社会から抜けだそう。

2 貧乏な人とは、モノを持っていない人ではなく、無限の欲がある人たちのことだ。モノを持つことは大切ではない。

3 経済が豊かになり、お金やモノをもつことが幸せではない。幸せとは、家族を持ち、愛にあふれていること。

彼のスピーチを見ていただこう。

会場にいらっしゃるみなさま、そして招待いただいたブラジルとディルマ・ルセフ大統領に感謝を申し上げます。

この場では、国を代表する者が集まり、私たち人類がこれからどうすべきかという問題を、みなさま志をもって議論されているのだと思います。しかし今、私の頭の中にある消えない疑問をお話させて頂きたいので、どうかお聞きください。

本当に世界を良くしたいと
心から考えていますか?

URUGUAY ELECTION

さて、持続的に可能な発展と世界の貧困をなくすことについて話し合われてきました。しかし、今私たちが目指すべきことは、現在の裕福な国々の発展の消費モデルを真似することなのでしょうか?

みなさんに質問です。例えば、ドイツ人が一世帯で持つ車と同じ数の車をインド人が持つことになれば、どうなるでしょう。地球で呼吸するための酸素はどれだけ残るでしょうか。さらに言い方を変えましょう。西洋の富裕層が当たり前とする傲慢な消費を世界の70億~80億人の人がしたら、どうなるでしょう。そんな原料がこの地球上にあるでしょうか?

こんなこと可能なわけがありません。
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この無限の消費と発展を求める市場経済や資本主義でできた社会を作ってきたのは、間違いなく私たちです。そしてグローバリゼーションの発展により、世界のあちこちまで原料を探し求めるようになりました。まさに競争だけで成り立っている社会になりました。

このような状況の中で「みんなの世界を良くしていこう。貧困をなくしていこう」というような共存共栄な議論は成立するでしょうか?一体どこまでが仲間で、どこからがライバルなのかさえ分からないのに。

このようなことを言うのは、この会議の重要性を批判したいからではありません。その逆です。私たちの前に立つ“本当の問題”について話し合いたいのです。

大量生産・大量消費
使い捨ての社会を抜け出そう

Heaven & Earth

私たちは発展するために、この地球に生まれてきたわけではありません。幸せになるために生まれてきたのです。人生は短く、あっという間に過ぎていきます。私たちは、命より尊いモノは存在しないということを忘れてはいけません。

でも私たちは今、自分たちが作り出したはずの消費社会にコントロールされています。今の世界では、モノをより早くより多く消費し続けなければなりません。消費が止まれば経済が麻痺し、不況がみなさんの前に現れることになるからです。

そのためには商品の寿命を縮め、できるだけ多く売らなければなりません。10万時間持つ電球が作れたとしても、1000時間しか持たない電球を作るのです。人がもっと働き、もっと売るために「使い捨ての社会」を続けようとしているのです。この悪循環の中にいることを気づいて下さい。

Water Pollution with Trash Disposal of Waste at the Garbage Beach

石器時代のような生活に戻れと言っているのではありません。今の消費社会を、コントロールしなければならないと言っているのです。
古代ギリシアの哲学者エピクロスはこう述べています。「貧乏な人とは、少ししかモノを持っていない人ではない。無限の欲があり、いくらあっても満足しない人のことだ」と。

私は、これこそがこの会議にとって重要なポイントだと考えます。問題源は、水源危機とか環境危機といったことではありません。もっと根本的な問題は、私たちが作り上げた社会モデルであり、政治の在り方だということを分かって頂きたいのです。見直さなければならないのは、消費社会そのモノなのです。

発展することで幸福を奪うな
幸せは、シンプルなところにある

私は環境資源に恵まれた小さな国の代表です。私の国には300万人ほどの国民しかいませんが、世界でもっとも美味しい1300万頭の牛が育ち、1000万頭近いヤギもいます。領土の90%が豊富な資源となっているのです。

Leaving the Farm

でも、労働者たちのほとんどは長時間労働を行っています。車やバイクなどのローンを支払わないといけないからです。毎月たくさん働き、ローンを払うという生活を続ければ、幸せな人生は一瞬で過ぎていき、気が付けば私のような老人になっていることでしょう。果たしてこれが人類の運命なのでしょうか?

私が言いたいことは、とてもシンプルです。「発展は幸福を阻害するモノであってはいけない」ということ。発展は人類に幸福をもたらすモノでなくてはなりません。愛を持つこと、家族をつくり子どもを育てること、友達を持つこと、そして必要最低限のモノを持つこと。こういったことを、もたらすべきなのです。

URUGUAY-ELECTION

それは人類にとって「幸福」が何よりも大切だからです。だから環境のために戦うのであれば、「幸福」こそが環境の一番大切な要素であるということを覚えておかなくてはなりません。ありがとうございました。

Top photo by Congreso de la República del Perú
/ Reference:youtube

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