『フューリー』(2014) ~鋼鉄の家族、地獄を往く~

フューリー(2014)
2014年/アメリカ・イギリス/135分
監督:デヴィッド・エアー
出演:ブラッド・ピット
   ローガン・ラーマン
   シャイア・ラブーフ
   マイケル・ペーニャ
   ジョン・バーンサル

概要
原題は『Fury』。アメリカ・イギリス合作による2014年の戦争映画です。監督は『エンド・オブ・ウォッチ』のデヴィッド・エアー。主演は『ファイト・クラブ』のブラッド・ピット。共演にローガン・ラーマン、シャイア・ラブーフ、マイケル・ペーニャ、ジョン・バーンサルといった、なかなかの漢(おとこ)たちが顔を揃えます。

あらすじ
1945年の4月。ドイツ軍が最後の抵抗を続けていたヨーロッパ戦線。"Fury(激怒)"と名づけられたシャーマン戦車を勇敢な3名の部下とともに操る歴戦の猛者ウォーダディー(ブラッド・ピット)のもとに、戦闘経験ゼロの新兵ノーマン(ローガン・ラーマン)が配属される。初めて体験する戦場にただただ圧倒されるノーマンだったが、戦争は待ってはくれなかった……

勝手な感想
我々観客と同じ立場にあると言ってもいいタイピスト童貞の新米兵士が、地獄の戦場に突然放り込まれ、ブラピとーちゃんの圧力と暴力と魅力の前に全面降伏し、いつの間にか殺戮マシンへと変貌して帰り道がわからなくなるという、いわゆる嫌戦、反戦映画なのであります。

なんともはや、戦争、戦場というものの複合的な汚らしさとおぞましさが、「テメェこれでもかっ!」ってぐらいにある意味では嬉々として描かれておるのですな。死屍累々あっちもこっちも死体の山、山、山。嫌戦、反戦を謳っているわりには、「あんたそれ楽しんでんとちゃいますの?」って感じなのであります。

リアルがどうかは置いといて、おっかねぇ戦場のホラー祭りでこちらをビビらせながら、それと同時に血湧き肉踊り狂う戦争ヒーローものとしての高揚感も描くアンビバレンス。モノホンの怪物ティーガー戦車との絶望的対決はまさに男子の本懐でありますな。こここそが真のクライマックスであり、そのあとの無謀な玉砕は単なるエクスキューズです。

絶対的家父長制や宗教を、肯定しておるのか否定しておるのか、いまいち判然としないわかりにくさがあるものの、あのリアルに窮屈な鋼鉄の「家」の内部で形成される、遣わされた疑似家族の関係性と使命感を見ると、こいつぁやはり……と思いながらもなんとか踏みとどまって、結局のところはまだ答えは出ていないのであります。でもまあ、あえて十字路を選んでいるぐらいですからね。あれは鎮魂なのか?赦しなのか?はたまた裁きなのか?

しかし、嬉々として死体の山を築いておきながら、「いやいや、実はこれって反戦映画なんですよ~」と安易にセリフで語られても、説得力に欠けるというか、かなり危ういバランスの上に成立しているような気がしてなりませぬな。『アメリカン・スナイパー』以上の危うさのような気がいたします。余計なエクスキューズなんぞ語らせんでも、腕がちぎれ、頭が吹っ飛び、内臓がボロロロロンとなる地獄の戦場描写だけで事は足りるのです。『スターシップ・トゥルーパーズ』を観てみなされ!ってあれも危うかったか♪

私的偏愛度:★

本文で紹介した危うい2作はこちらです。興味のある方はあわせてお読みください♪
スターシップ・トゥルーパーズ(1997)アメリカン・スナイパー(2014)
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