上手に悩むとラクになる
2015年3月27日
今回は、大人のADHDの方が困っていることの代表的なもののひとつである、「時間管理」についてご紹介します。
時間管理とは、以下のような事柄に関係します。
◆大人のADHDの方の時間管理に関するチェックリスト
- 人との待ち合わせの時間に遅れてしまう
- やらなければならないことを後回しにして、いつもギリギリで間に合わない
- 大事な用事の日時を忘れてしまう
- 寝るのがいつも遅くなり、翌朝なかなか起きられない
- 読書でも趣味でも、一度熱中するとなかなか止められない
- 一日が終わると、なにかしていたはずなのに、結局何もやり遂げていない
- やらなければならないことが多すぎて、気が急いて手につかない
- いつも目の前のことに追われてバタバタしているわりに、自分にとってもっとも重要なこと(長期的な目標など)についてはいつも手つかずのままだ
- めんどうなことだらけで、圧倒されて、逃げ出したい気分になる
- 根気強くやれば大きな満足が得られることはわかっているけれど、目の前の別の快楽を追い求めてしまう
少し解説を加えます。
(1)(2)は、以前のコラムでもお伝えしたとおり、いわゆる「締め切りギリギリ癖」です。時間の期限から逆算して、時間を見積もり、計画立てるスキルと関連します。
たとえば、1週間後に締め切りの提出しなければならない書類があったとします。みなさんなら、その書類への記入作業をいつ計画しますか? 「今は忙しいから、そのうち手があいたら」と、いったん保留にする人がほとんどではありませんか?
「そのうち手があいたら」というやり方でも、ちゃんと実行できる方はよいのですが、書類を受け取って即座に記入できる状況はなかなかないですし、参考にする資料が必要だったり、印鑑等の必要な物品があったりするかもしれません。
あなたがもし、書類を記入しなければならないこと自体を忘れてしまったり、面倒に感じて後回しを続けることで、締め切り当日までの1週間ずっと重い気分を引きずってしまっていたりするとしたら……残念ながら、計画性に乏しい「締め切りギリギリ癖」があると言えます。
それに対して、こういうふうに言う人もいます。
「やらなくちゃいけないことがあることはわかってるし、それで気が重くなんかなりませんよ。考えないようにしています。(そのかわり、ずっと街でショッピングしたり、友達と飲んだりして活動していないと落ち着かないってだけです)」
これは、やらなくてはならない憂鬱な気持ちに蓋をして、逃げ回るかのように『過活動状態』に陥っていると考えられます。
(3)は、日時の約束を記憶できていないことに起因します。情報の管理システムについて、習慣を変える必要があります。
具体的には、携帯やスマートフォン、手帳などのツールで、日時に関する情報をひとまとめにしておくことです。こうした管理方法については、学校で習うことはありません。こうしたツールを使いこなせなくても、自然に記憶できる人も大勢いるからです。
しかし、あまりに頻繁に人との約束を忘れてしまっては、プライベートでもビジネスでも信頼を失います。ここでは面倒でも、ツールを使いこなすスキルを身につけることが大切です。
(4)(5)(6)は、実は最もよくある困りごとです。日中の過ごし方に計画性が少ないため、思うようにタスクがはかどらず、やり遂げた感覚を持ちにくいのです。そのため、
「やらなければならないことではなく、やりたいことができる」と、ようやく一息つける時間はいつも深夜
↓
このまま寝たくない
↓
翌朝、睡眠不足……
という悪循環を生んでいます。その結果、翌日は睡眠不足で脳がうまく働かないまま集中力を欠き、記憶力も低下して何をやっても中途半端でやり遂げることが難しくなるかもしれません。失敗も多くなり、自信をなくしていくかもしれません。
(7)(8)は、優先順位づけのスキルに関する問題です。複数の物事をリストアップして、優先順位をつけて、処理する順番を決める計画性が関連しています。
この
という冷静な作業。仕事でも家事でも育児でも使えるスキルですが、簡単ではありませんね。
(9)は、何か気乗りしないことを始めるときに、重い腰を上げるためのパワーの出し方に関連します。心理学では「自己活性化」といい、大人のADHDの人では特に、興味のないことに対してこのスキルを意識的に使うことが必要になります。
(10)は、大人のADHDの人の「報酬遅延勾配」に関するものです。これについては、また別に詳しく解説します。
いかがでしたか?「時間管理」といっても、幅広い問題に対応していることがお分かりいただけたと思います。次回からは、それぞれのスキルについて詳しくご紹介致します。
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