先日mogwaiのライブに行ってきた。mogwaiのライブに行くのは、多分10回は超えている。そこまで通っているのは日本のバンドでもあまりいない。
どんなバンドかといえば、爆音ギターのインストバンドだ。初期の曲で、僕が最もよく聞いていたX'mas Stepsという曲がある。
例えばこの曲は、静かなギターの音で始まる。それが少しずつ不穏さを増していき、歪んだベースの音が重なるとともにテンポが上がっていく。4:18くらいから、ザクザクとしたギターリフのユニゾンが始まり、4:50からギターの爆音が炸裂する。これがライブで聞くと、ギターからこんなデカイ音が出るものなのかとひっくり返るのだ。
今はなき新宿リキッドルームで見たのだけど、終わった後に友人が「新宿が吹き飛ばされたかと思った」という秀逸なコメントを残した。
mogwaiは日本を好いてくれているのか、当時は一年にニ、三回来日してくれることもあった。
彼らもずっと変わらないようでいて、途中でバリーが加わって人数が増えたり、少しの間だけチェロが加わって抜けたり、約30分の曲を演奏したり、また打ち込みやボーカルを加えたりと、爆音ギターのインストバンドという形態の中で変化し続けている。
でも変わらないのはライブだ。いつでも緊張感と殺気がある。爆音だけでなく、極力小さな音で緊張感をもって演奏している時も素晴らしい。曲の最中、確かジョン・カミングスが飲み物の缶をプシュッと音を立てて開けてしまった時、「やっちまったー」みたいな顔をしていたことがあった。
インタビューDVDで、メンバーは口を揃えて「バリーは天才だ」と言う。確かにバリー加入以前と以後では、より音楽的になり、音像もバラエテイに富むようになった。
しかし、mogwaiの核はステュアートのギターだと思う。彼のギターがあるからこそ、緻密で、そして緊張感と殺気が漲っている。
mogwaiを轟音ギターのバンドと呼ぶ人もいる。むしろそう呼ばれる方が多い。だが僕にとっては爆音ギターのバンドだ。
轟音という言葉には、包み込むような空間の要素がある。もちろんmogwaiの曲も、マイブラの影響を受けた美しいギターのホワイトノイズが轟音のようになる曲もある。古くはマイブラ、その後はmogwaiの影響によって、世界中で轟音のバンドが増えた。
しかし、mogwaiが持つ殺気を取り入れるバンドは少ないように思う。一時期ポストロックが流行った時、だいたいのバンドがだんだん盛り上がって音が大きくなる曲を演奏していた。
そのようなmogwaiも、爆音を発揮できるライブが至高で、音源では中々本領が発揮できない。
2ndのcome on die youngは、緻密な設計と緊張感から、音源でもmogwaiらしさを十分に発揮できていたと思う。しかし、どうしてもワンパターンになりがちなこともあり、中々音源なりの良さを発揮できなかったと思う。
だが、ここ二作は音源としてもとても良い。mogwaiも良い意味でベテランになり、曲もバラエテイに富み、力の抜けた展開が適度に混ざることもあり、一枚を通して聞いても飽きない。
例えばHardcore Will Never Die But You Willの中にToo Raging to Cheersという曲がある。静かで不穏で、少し悲しげな演奏に、mogwaiにしては珍しいいかにもマイナーな旋律のバイオリンが重なり、最終的に爆音のアンサンブルで締めてくれる。mogwaiは、このような分かりやすい形でマイナーなメロディや雰囲気を出すことは避けてきたように思っていたが、それを表現しつつ、いつもの爆音もちゃんとあることに、彼らの積み重ねてきた自信を感じる。
特にライブだと、バイオリンの旋律をスチュアートがギターで弾くのだが、このような泣きの旋律をギターで演奏することは全くなかったと思う。でもとても似合っていた。
今年、結成20周年だという。年齢を重ねても実験的で、かつハードコアなままでいてくれるmogwaiのライブや音源が今後も楽しみだ。
Hardcore Will Never Die But You Will
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