<カワイイとバカがテレビの多様性を奪う>テレビを席巻する「カワイイ」と「おバカ」を憂う。
メディアゴン 3月10日(火)6時10分配信
吉川圭三[ドワンゴ 会長室・エグゼクティブ・プロデューサー/元・日本テレビ ゼネラル・プロデューサー]
先日、テリー伊藤さんの「テレビ馬鹿一代」という本を読んだ。
正直、伊藤さんの本は駄作もあるし傑作のあるが、この本は本来、天才的なバラエティ演出家であった伊藤さんが、毎日新聞の連載から推敲に推敲を重ねて、いままで殆どあえて避けて触れていなかった「テレビというもの」について徹底的に考え抜かれた本質を突いた素晴らしい本だ。
文章は解りやすいが、テレビのドラマ担当者からバラエティ担当者、スポーツ担当者まで全てのテレビ屋さんに読んでほしい本である。
その中にこんな文章がある。
「日本のテレビは全てをカワイイにされてしまった。」
・・・動物&ペット、AKB等のアイドル、お笑い芸人、ゆるキャラ、スポーツ選手他カワイイ存在は人気を得るが、そうでない存在カワイくない存在はほとんど人気が出ない。むしろ下手するとバッシングにあう可能性もある。多少の欠点があってもカワイイ存在は人気獲得の保険になる。
日本においてカワイイは「絶対善」で、カワイクないは「絶対悪」である。・・・テレビはこういう解釈傾向を日本人に与えてしまった。政治家・小沢一郎氏や落合博満元監督などのカワイくないコワい存在はいくら能力が優れていても、全く人気が出ない。・・・という内容だ。
確かに日本には「カワイイ」が充満している。フルーツが沢山乗った美味しそうなケーキも「カワイイ」だし、スマホの凝ったケースも「カワイイ」だし、中年男性俳優が「おしゃれカンケイ」に登場したときも「カワイイ」と言われ迎えられることもある。
そういえば、NHKで「東京カワイイTV」という番組もあった。アクセサリーや雑貨店等を紹介する番組だった。深夜番組だったが「この時間になんでNHKがこんなのやってるの?」と疑問に思ったものだ。「カワイイ」イコール「クール・ジャパン」などと思っているの?などと邪推したものだ。
美意識等と言うものは時代で変わるのはある程度分かっているが、この状況は「カワイイ」を強制するファッショだと思ったこともある。「まあそれだけ日本は平和という事なのだ。」と言われると、返す言葉もないが。
最終更新:3月10日(火)6時10分
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