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チャットモンチーの女子トーク。男子は夢見がち、女子は感覚的?
インタビュー・テキスト:三宅正一 撮影:永峰拓也(2015/03/10)
女子ならではの強さと弱さ、楽しさと生きづらさ、そして一途な想いを、曲の世界の中だけでなく、自らの生き様においても表現してきたチャットモンチー。2011年にドラマーが脱退した際には、新たなメンバーを入れずに二人だけでバンドを継続させることを決意。一見無茶とも思える「2ピースバンド」を、タフな精神と自由な発想で見事にやり遂げ、アルバム『変身』を完成させた。その翌年、リーダーの橋本絵莉子が結婚・出産を発表。約1年の活動休止期間を経て、Hi-STANDARDのメンバーであり橋本自身が10代の頃から敬愛していた恒岡章と、the chef cooks meの下村亮介という男性二人を迎え入れた新体制で復帰のステージに立ち、ロックシーンを驚かせた。
そしてデビュー10周年を迎えるタイミングで、二人はまたしてもバンドの在り方を更新させる。新たなサポートメンバーとして、ドラムに北野愛子とピアノ&シンセサイザーに世武裕子を迎え、「乙女団」と命名した編成でニューシングル『ときめき / 隣の女』をリリース。福岡晃子が作詞を、橋本が作曲を手がけたこの2曲は、まさに女性でなければ描けないリアルな恋愛観や女性像があらわになった楽曲に仕上がっている。橋本の結婚と出産を経て、30代を迎えたチャットモンチーが真っ向から女性を描くとはどういうことなのか? そこに迫ると、現在進行形のチャットモンチーのマインドがはっきりと浮かび上がるインタビューになった。
チャットモンチー
橋本絵莉子を中心に2000年徳島にて結成。2004年春に橋本(Gt,Vo)、福岡晃子(Ba,Cho)、高橋久美子(Dr,Cho)の体制となり、2005年11月『chatomonchy has come』でメジャーデビュー。2007年リリースの2ndアルバム『生命力』に続き、2009年3月リリースの3rdアルバム『告白』は、オリコン初登場2位を記録。現在のロックシーンを代表するバンドへと成長を遂げる。2011年10月より橋本と福岡の2ピース体制となり、楽曲ごとに担当楽器を変えるフリーフォームな形で録音したアルバム『変身』(オリコン初登場2位)をリリース。それに伴う全国ツアーも2人のみで行われ、ファンのみならず、ミュージシャンからも熱い支持を得る。2013年5月、橋本が結婚及び妊娠を発表し、一時活動休止期間に入る。2014年8月に、恒岡章(Dr / Hi-STANDARD、CUBISMO GRAFICO FIVE)、下村亮介(Key, G / the chef cooks me)という男性サポート2名を迎えた4人体制で活動を発表。2015年1月には、世武裕子(Pf,Synth)、北野愛子(Dr / DQS, nelca / ex.your gold, my pink)という女性2名を迎えた4人体制での活動もあらたに発表。
CHATMONCHY | チャットモンチー
(えっちゃんには)守るべきものがあるという強さをすごく感じます。だからなのかな? 歌がすごくよくなった。(福岡)
―橋本さんにお子さんができたことで、活動のあり方は変化しましたか? たとえばスタジオでの時間の制限も出てくるでしょうし。
橋本(Vo,Gt):そうですね。何時まででもスタジオにこもってるわけにはいかなくなったので。最初は「子育てしながらできるかな?」と思ってたけど、今はそういうやり方に慣れてきました。
福岡(Ba,Cho):確かにいろんなことが変わったんですけど、それも普通に受け止められていますね。でも、やっぱりえっちゃん(橋本)はすごいなと思いますよ。家に帰ったらお母さんという大仕事をやっているので。ただ、音楽的にはサポートメンバーが入ることでそれぞれの役割がよりはっきりして、制作面ではスムーズなんですよ。楽しくやれてます。
―福岡さんから見て橋本さんの変化ってありますか?
福岡:曲の内容やバンドに対する考え方に変化はないと思うんですけど、守るべきものがあるという強さをすごく感じます。だからなのかな? 歌がすごくよくなった。
橋本:うん、自分でもよくなった気がする。
福岡:歌声もニュアンスもすごくよくなっていて、歌入れのときにディレクターと思わず「すげえ!」って言いました。
橋本:自然と変われたと思うんですよね。前までは「がんばらなきゃ! 絶対に今日歌入れを終わらせなきゃ!」って力んでたところがあったと思うんですけど、今は自然に歌えてるんだと思います。「今日ダメだったら別日でいいか」って思える余裕を持てるようになったというか。
福岡:今は「私ができないのであれば、それはそれでしかたない」ってドンと構えてる感じがあるんですよね。バンドでも自分がリーダーであるという立場をしっかり受けて止めてると思う。
橋本:まだまだなんですけど、はい(笑)。
―前シングル『こころとあたま / いたちごっこ』では恒岡さん(章 / Hi-STANDARD、CUBISMO GRAFICO FIVE)と下村さん(亮介 / the chef cooks me)をサポートメンバーに迎えた「男陣」で、このニューシングル『ときめき / 隣の女』は世武さんと北野さんを迎えた「乙女団」で制作されたわけですけど、今後もこの2つの編成を使い分けると解釈していいですか?
福岡:はい、そういうことですね。
―サポートを迎え入れる感覚はどうですか?
福岡:今まで自分がサポートとして呼ばれることはあっても、自分のバンドにサポートを迎え入れるのは初めての経験だったんですよね。最初に「男陣」を迎えるときに、サポートメンバーと距離感があると音楽を共有しづらいと思ったから、ツネさん(恒岡)とシモちゃん(下村)とは長時間スタジオに入ったんですよ。それでサポートメンバーと曲作りをするコツをつかんで、今回のシングルでは前ほどスタジオに入らんかったよな?
橋本:うん。バンドになるには、とにかく一緒にいる時間が長く必要という意識が強くて。それを経て、「乙女団」での制作は、ある程度サポートの二人に演奏してもらうイメージを持った上で私とあっこちゃん(福岡)がアレンジをしてからレコーディングに臨むようにしました。そのほうがやっぱりスムーズなんですよね。あとは、あっこちゃんが世武ちゃんのサポートでベースを弾いてたことがあったから、世武ちゃんのピアノの雰囲気もわかってたし、(北野)愛子さんとも元々友だちだから二人の演奏がイメージしやすいんですよね。
―同性同士だからこそわかり合えるところもあるでしょうしね。
福岡:男性より女性のほうが感覚的なんですよね。ニュアンスの伝わり方は、やっぱり女同士のほうがわかりあえるところはあるかな。あとは、アレンジ前の段階から「この曲は『男陣』で、こっちの曲は『乙女団』で」ってわけていて。だから両方とやるのがおもしろいんです。
橋本:男の人と女の人では絶対に違うものが生まれるはずだから。おもしろい見せ方もできると思うし、それを楽しみたいと思ってます。まあ、ジャック・ホワイト(元The White Stripesのメンバー。男性のみのバックバンドと女性のみのバックバンドを使いわけている)を参考にしてるんですけど。
福岡:あ、サラッと言った(笑)。
―チャンネルの使い分けができていると。
福岡:頭は使いますけどね。それも楽しいです。えっちゃんは昔からツネさんが憧れの人でもあったから最初は緊張してたんですけど、最近はイジったりするようになって(笑)。「乙女団」のときは、世武ちゃんと愛子ちゃんがすごく女子力が高くて、休憩時間はおそろいのリップクリームの話とか、ここのチョコがおいしいとか、そういう女子トークをしてキャッキャッしてます(笑)。
橋本:女子は話がおもしろい! 世武ちゃんなんかひとつのテーマでずっとおもしろい話をしてくれるから、それを聞いてるだけで楽しいです(笑)。でも、「男陣」は「男陣」で自分たちにはない刺激をもらえるから、どちらも時間を重ねるほど楽しいです。私たちは人に恵まれてるなと思います。