柳谷政人
2015年3月10日17時03分
10日、全線開業から40年を迎えた山陽新幹線の特徴はトンネルの多さだ。新大阪―博多間に142カ所あり、総延長は全区間の半分を占める約280キロに達する。建設、騒音対策、そして保守点検。関係者はそれぞれの立場で苦労を乗り越えてきた。
■カワセミに導かれ、爆音を解決
山陽新幹線にトンネルの多い理由は、高速化を目指してカーブを減らしたためだ。建設費や工期を抑えたため、断面積は外国の鉄道より狭い。このトンネルに高速車両が入ると、出口側で大きな爆音が起きた。
JR西日本は時速350キロで新大阪―博多間を2時間で結ぼうと考えていた。試験車両で350キロはすぐに達成できたが、車両の試験実施部長だった仲津英治さん(70)=大津市=は、この爆音が最大の壁だったと振り返る。夜間試験中に赤ちゃんが泣き出した、瓦が落ちた、と苦情が殺到した。
爆音の正体は、車両が飛び込んだトンネルの中で空気が圧縮され、出口側に放出される衝撃波だ。野鳥観察が趣味の仲津さんは、空中から抵抗の大きい水中に飛び込んでえさを捕るカワセミが頭に浮かんだ。「参考になるんじゃないか」。小さな筒に車両型の弾を打ち込む実験を進めると、本当にカワセミのくちばしの形が最も抵抗を減らしていた。
1997年、細長い先端部と円形の断面が特徴の、近未来的な500系車両が誕生した。
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