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彼女たちはなぜイスラム過激派にはまるのか……ある「ジハード系女子」の告白&新聞での分析

日本でも「ネット映像を見てから現地を見たくなった人」や「ネットで戦闘員に恋をしてしまったらしい女性」が報告されていますが、既に数百人の男性と数十人の女性がシリア入りしている英国では、2月下旬の3人の女子中学生の事例を受け、「かつて過激主義にかぶれていた人」のインタビューなどが出ています。

更新日: 2015年03月10日

nofrillsさん

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英国でのイスラム過激主義

(死者52人、負傷者約700人を出した2005年7月7日のロンドン公共交通機関同時爆破事件は)英国人4人が実行犯だった。犯行グループのリーダー、モハメド・サディク・カーン容疑者は事件前に録画したビデオで、「われわれの仲間に対する爆撃や毒ガス攻撃、監禁や拷問をやめない限り、われわれはこの戦いをやめない」と語っていた。

この発言は今も、イスラム過激派の基本姿勢や、彼らの行動の論理的根拠であり続けている。「お前たち(西側民主主義)がイスラムに戦争をしかけているから、イスラムの最前線にいるわれわれがお前たちと戦争をしている」というものだ。若者の急進化、特に若いイスラム教徒の急進化には当時多くの議論があった。

その後、急進化はさらに深く進んだように見える。「イスラム国」や他の過激派組織に参加する目的で英国を離れた若者の数については諸説あるが、若者の急進化防止対策が足りないと英政府を批判するハリド・マフムード議員は昨年8月、毎年500人前後の若者が、聖戦願望を胸に英国を離れたと指摘した。累計で「少なくとも1500人」とすれば、英外務当局の推計300─400人を大幅に上回り、英軍に在籍するイスラム教徒の数600人の2倍以上ともなる。

▼過激主義と、若い女性たち

2014年後半の段階で、英国からシリア・イラクのジハディスト集団に加わっているのは500~700人と推計されているが、2014年の夏以降、特に問題としてクローズアップされているのは、10代後半から20代前半の若い女性たちの渡航事例だ。

ネットで過激主義に触れて感化され、シリア・イラクにいる戦闘員と「結婚する」ために飛んでいってしまう彼女たちは、jihadi brides(ジハディストの花嫁たち)と呼ばれている。

例えばアクサ・マフムード (Aqsa Mahmood) という20歳の女性は、グラスゴー(スコットランド)で生まれ育ち、地元の私立の名門女子校 http://en.wikipedia.org/wiki/Craigholme_School で教育を受けて、グラスゴー・カレドニアン大学(元ポリテクだが名門)で診療放射線技師のコースを取っていたが、2013年11月に学業も何もかも放棄してシリアに行ってしまった。両親には「天国で会いましょう」というメッセージが残されていたという。(この「天国」云々というのがイスラム過激派の大きな特徴のひとつ)

アクサ・マフムードはパキスタン系の家庭に生まれ、イスラムの信仰は固く持っていたものの、コールドプレイをよく聴き、ハリー・ポッターの本を読むという、ごくありふれた英国の少女だった。性格は温和で親切で、いろいろなバックグラウンドの人たちの輪の中で平凡な日々を過ごしていた。

しかし、医療への関心があった彼女は、イスラム過激主義の「大義」にはまっていく。

(医療や保育、教育など「他人のために働く」ことに興味のある若い女性が過激派にリクルートされているという事例は、欧州大陸からも何件も報告されている。)

She has since married a Syrian fighter and, on the evidence of her social media messages, rejects all the trappings of the world she left behind.

Her role in Syria appears to be largely supportive, cooking, cleaning and child care. But her prolific tweeting betrays the hardened outlook she has developed.

Hostile references to “kuffar”, or non-believers, suggest she regards even the non-Muslims she grew up with as worthless enemies.

彼女はシリアに行ってからシリア人戦闘員と結婚し、彼女が捨ててきた世界(西洋世界)を全否定するようになった。つまり、「生まれ変わった私」だ。(この「生まれ変わった私」の概念は、イスラム教に固有のものではない。むしろキリスト教でよく知られている例がかなりあると思う。ジョージ・W・ブッシュ前米大統領とか。)

シリアでは彼女は戦闘などには参加せず、家事や育児のような支援的なことに携わっているようだが、Twitterでの彼女の語彙は激しく、かつて一緒に育った非イスラム教徒を「価値のない敵」と見なしているのではないかと思われる。

There is no indication that Mahmood has taken part in combat or terrorist operations.

But she tweeted with warm approval about witnessing the executions of two captured Syrian soldiers and leaves no doubt about her ringing endorsement of ISIL violence.

捕虜とされたシリア国軍兵士2人の処刑を目撃した彼女は、暖かい賞賛の念をこめてそれについてツイートしている。彼女がISISの暴力を全面的に肯定していることには疑いの余地がない。

She praises last year’s Boston marathon bombing, a mass shooting that left 13 people dead at the Fort Hood United States military base in Texas in 2009 and the murder of Lee Rigby, a British soldier stabbed and hacked to death by two Islamist extremists in a south London street near the Woolwich barracks last year.

Using the name Umm Layth, she tweeted in June: “Follow the example of your Brothers from Woolwich, Texas and Boston etc. ...

2013年のボストン・マラソン爆弾事件や、2009年のテキサス州でのフォート・フッドにおける銃乱射(13人死亡)を賞賛し、2013年5月のウリッチ事件 http://matome.naver.jp/odai/2136923620898738101 も讃えている。

アクサ・マフムードはシリアから、このようなツイートをしていた。彼女のネットでの発言については、上記のThe Nationalの記事や、SITEのブログに詳しい。
http://www.thenational.ae/world/europe/from-coldplay-to-jihad-the-scottish-girl-who-joined-isil
http://news.siteintelgroup.com/blog/index.php/about-us/21-jihad/4406-girl-talk-calling-western-women-to-syria

2015年2月に行ってしまったロンドン東部の女子3人(写真)をネットで感化したのは、アクサ・マフムードだといわれている。(3人のうちの1人が、アクサ・マフムードとメッセージをやり取りしていた。)

▼過激主義にかぶれていたことのある20代女性の告白

BBC News - 'Attractive jihadists can lure UK girls to extremism' bbc.com/news/uk-317044… ほんとに「ジハード系女子」みたいなノリなので唖然とする。

BBCのこの記事には映像がついている。映像はBBC Newsではなく、BBCが平日夜にやってる時事番組、Newsnightのクレジットだ。

「シリアに行ってしまったロンドンの10代女子3人」の映像を導入部としたこの映像は、彼女たちと同じように過激主義にかぶれたことのあるミッドランズ(地図参照。バーミンガム、レスターといった都市を含むイングランド中部地方)の20代の女性、アイーシャ(仮名)にインタビューしたものだ。

A young woman from Midlands in her early 20s, who was herself sucked into fundamentalism while at college/university. It started online.

ビデオの冒頭、インタビュアーが彼女についてこう説明している。「ミッドランズの20代初めの女性に話を聞いた。彼女自身、大学で原理主義に飲み込まれた。始まりは、ネットだった」

BBCのインタビューで、アイーシャという仮名で呼ばれている彼女は、ISISが出てくる前のアルカイダの情宣に感化されていた。最初は16歳か17歳のときにFacebookである男と知り合った。

セクハラぎりぎりの発言をして彼女が「美人である」ことをほめた男は、「その美しさをやたらと人に見せないでほしいな。きみはとても大切な人なんだから」というようにアプローチ……イスラムの信仰を抱いていた彼女に対し、男は「天国と地獄」の話をして心をつかむ。

「イスラム国」を自称する集団(以下「ISIS」)がYouTubeにアップするビデオなどは、戦闘員の身体的な魅力を隠そうとはしていない、とBBCの記者は指摘する。(実際、2013年から2014年に彼らがJaNと袂を分かったころのISISの情宣の写真や映像は、彼らなりの「イケメン博覧会」状態だった。日本の女性誌の「スーパーボーイ・コンテスト」みたいな「さわやかな笑顔の青年たち」)

Photo by Ryan McVay / Photodisc

テレビでニュースなどを見ていて、本題とは関係のないところが気になってしょうがなくなったことがある人は多いと思う。私の場合、画面の端の要人警護の人が知り合いに似ていると思ったらツボってしまったことがある。スポーツ観客席で美男美女が大写しになって「かわいい子がいる」と思うこともよくあるだろう。友人や家族と、そういったとりとめのない話をしながら、テレビを見るということはよくある。

その感覚で、ジハディストのプロパガンダを、スマフォやタブレットやパソコンで、10代女子が自分だけで見ている。そしてビデオを見てすぐにFBなどで「現場にいる人」とつながる。

感化されずにいられる人は、あまりいないだろう。

"As a teenager I wanted to get my piece of eye candy and I'd take a good look, and all the YouTube videos, for some reason, they [the militants] were all really, really attractive.

"It was glamorous in the sense it was like 'oh wow, I can get someone who practises the same religion as me, who's not necessarily from my ethnicity and that's exciting'."

アイーシャは言う。「10代の私は、イケメンがいたら嬉しい的な気持ちで目を皿にしてビデオを見ていたのですが、YouTubeにアップされていたビデオはとにかくかっこよく見えました。自分と同じ宗教を実践してるけれど、必ずしも自分と同じ民族ではないという人と付き合えるかも、というのがとても魅力的でした」

記事には書かれていないが、アイーシャはこのころ、ニュースを見つつYouTubeのプロパガンダを始終見ていたようで、ニュースで誰それが死んだと流れるのを見て「マジで? この人こないだ、ビデオで見たよ、あたし!」といった経験をしていた、と語る。そしてそれが、「えー、この人が殺される前に何とかして出会わないと!」という気持ちをかきたてたのだと。

そして、人が死んだことについての悲壮感はない。なぜなら「天国で再会できるから」。

また、これも記事には書かれていないが、アイーシャは2011年9月にイエメンで米国のドローンによって殺されたアメリカ出身の過激派でAQAPの西洋向け宣伝をやっていた、アンワル・アル=アウラキのビデオをネットでよく見ていたという(インタビュー映像の2分くらいから)。

彼女に声をかけた人物が見てみるように促したのが直接のきっかけのようだが、アウラキが西洋諸国に住んでいるイスラム教徒の過激化で大きな役割を果たしていたことが改めて思い出される。

"When he was killed, it was a massive shock" とアイーシャは語っている。"At the time I was very sad because we'd lost a good leader."

ここでインタビュアーは、「宗教指導者やあなたと接触した人たちによって、殉教、ジハード、犯罪行為の方向へと押されていると感じたことはありますか」とアイーシャに尋ねる。するとアイーシャは「殉教」がいかにポジティヴなものとして語られていたかを説明する。

そして、「西洋社会で生まれ育ったイスラム教徒」が元々抱えている不安定な部分を、アウラキのようなプロパガンディストがいかに刺激していたかが生々しく語られる。

「説法では、私たちに対して英国人 (British) だという意識を持つなと言われることもありました。ここは多くのムスリム(イスラム教徒)を殺した国であり、敵国であり、国家も警察も信用しない。子供は公立学校へはやらず私立のイスラム学校かホームスクールで教育する」

LONDON, ENGLAND - JANUARY 12: Islam4UK Spokesman Anjem Choudary (C) leaves a press conference in Millbank Studios on January 12, 2010 in London, England. The radical Islamic group had planned to stage a march through Wootton Bassett to honour Muslims who have been killed in the conflict in Afghanistan, but have been prevented from doing so, under counter-terrorism laws. (Photo by Dan Kitwood/Getty Images)

アイーシャは「サラフィやワハビィは最終的にはイギリスがシャリーア法の国家になると信じています」と述べているが、その理念で活動してきた在英の過激派のひとりが、後藤さん・湯川さんが拘束されていたときにNHKニュースで「指導者」とフラットに言及されていたアンジェム・チョーダリである。

映像でそのあとインタビュアーは「英国の女性についてはどんなことを言っていたか」について質問するが、それへの答えが「女は家にいろ」的な話の羅列で、耳にするだけでぐったりしてしまう。

この点(反フェミニズムとか「伝統的」と称する疑似科学的な「男女の役割」論とか)は日本でも足がかりにされうると思う。

最終的にアイーシャが過激主義から離れたのは、「女性にとってあまりに不公平だから」ということと、「イスラム教を信仰していない人は殺さなければならないと言っているから」ということが理由だった。

最後にインタビュアーにモハメド・エンワジ(ジハディ・ジョン)について質問されると、アイーシャは、「過激主義にかぶれている人々は、エンワジをアイドル視し、ロール・モデル(規範)とみなすと思います」と答えている。

イスラム教に改宗した人道支援ワーカー(それも医療分野で、身体障碍を負った人のリハビリ療法士のようなことをしていた人。アブドゥルラーマン・カッシグさん)まで殺したと思われる人物がロール・モデル視されるという時点で、すべてが破綻しているのに、なぜ新たにISISランドに行こうとする10代女子がいるのか……と私などは思うのだが、おそらく、自分の頭で考えられなくなっているのだろうと思う。宗教(人間の生と死について考え、人間の恐怖を緩和したり利用したりする装置)をベースにした「洗脳」は、そういうことをする(それはキリスト教ベースであれ、仏教ベースであれ、あるいはほかの宗教ベースであれ、同じ)。

▼2015年2月にシリアに行ってしまったイーストエンドの3人の10代女子

'Syria-bound' London girls: PM 'deeply concerned' bbc.com/news/uk-315640… イースト・ロンドンの女子3人がシリアに行った件、ベスナル・グリーンか…1人は名前も公開されていないが、2人はバングラデシか?

"Shamima Begum, 15, Kadiza Sultana, 16, and an unnamed 15-year-old friend, flew from Gatwick to Turkey on Tuesday."

Tuesday = 2月17日

3人目は翌々日くらいに名前が公開された。

Bethnal Greenはロンドンのイーストエンド、シティのすぐ外側にある(地下鉄でリヴァプール・ストリート駅のすぐ次)。

くだくだと説明するより、観光ガイドブックにも載っている「大規模なカレー屋街」で有名なブリック・レインのあるエリアだと言えばわかりやすいだろう。ベスナル・グリーンは人口の4割以上がバングラデシュ系の人々だ。
http://en.wikipedia.org/wiki/Bethnal_Green#Demographics

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作った「まとめ」の一覧は:
http://matome.naver.jp/odai/2133787881446274501

※基本的に、ログを取ってるのであって、「まとめている」のではありません。



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