2015-03-10 鼻風邪ひきました
■[チベット]56年目のチベット蜂起記念日
まだ続いている。チベットでの焼身が。3年前にアムネスティが予言した通りになりつつある。
「最近の一連のチベット人の焼身抗議は基本的自由を侵害する同地域における長年の抑圧的政策がこれを煽っています」とバーバーは述べた。
「これらの問題が解決し、中国当局がチベット文化の締め付けを緩めるまで、不幸なことに、これらの絶望的な抗議の行為が続くのを見ることになる恐れがあります」
中国:中国当局は、チベットの焼身抗議後の弾圧を終わらせなければならない : アムネスティ日本 AMNESTY
内地での焼身者は137人に達した。これだけ多くのチベット人が身を焼きながら,中国はその抑圧的な制作を緩和しないどころか,より抑圧を強める方向に向かっている。彼らは二度焼かれているようなものだ。
現在のチベット問題とはどういう問題なのか,については昨年書いたエントリをご参照のほど。
ほんとうに焼身自殺を止めさせたいのなら - Danas je lep dan.(3/10)
チベット人はなぜ焼身するのか――中原一博『太陽をとりもどすために』 - Danas je lep dan.
チベット人にはまともな権利が与えられていない。西側諸国並の言論の自由と民主主義を今すぐに与えろとは言わんから(ほんとは与えるべきなんだけど,少なくともこの点では国内の全民族が抑圧されているので民族差別とはいえない),最低限漢人との同権が実現されるべきだ。というか,実現されていない現状が異常すぎる。漢人が旅行の自由を享受してチベットに観光に押し寄せる一方で,チベット人はチベット内の移動すらままならない。チベット人の土地や天然資源がチベット人の反対を押し切って収奪され,チベットの河川には鉱毒が垂れ流される一方で資源はチベットの外に持ちだされていく。漢語は国家の後押しを受けて世界的に普及しつつあるが,チベット語はチベット人の学ぶ教室からも徐々に駆逐されつつある。こんな露骨な二級市民扱い,もっとはっきり言えば植民地支配が許されていいはずがない。その意識は市民にも及び,チベットを訪れる漢人観光客は漢人に対しては許されないような振る舞いを平気でチベット人に対して行う。どこか既視感をおぼえる光景だ。かつてアフリカ人やネイティヴ・アメリカンや台湾原住民を見世物の対象にした帝国主義諸国と瓜二つだ。ラサの広報は漢人に委ねられ,漢人がまるで先住民であるかのようにラサを闊歩する。ほんとうの先住民族を追いやりながら。
近代以降,先住民族からの土地の収奪は絶えることなく続いてきたが,ここ最近,土地の権利を守ろうとする者への暴力が増加する傾向にあるという。もちろんそこには多くの先住民族が含まれる。
「土地権擁護者」への攻撃が世界で増加、国際人権連盟 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
ブラジルで開かれたサッカー・ワールドカップは,先住民族の土地を現在進行形で奪って作ったスタジアムで試合が行われた。沖縄では基地のために土地が収奪される。チベットでもチベット人の土地が奪われ,聖山は抗議むなしく採掘され資源は持ち去られる。かつて二風谷がダムに沈んだことを思い出さずにはいられない光景だ。
そして,文化的ジェノサイドも進行中だ。たとえば言語。なるほどチベット語は中国で公式に使われる言語の一つではある。しかしその使用領域は徐々に縮小され,チベット語コンテストは政治的であるとして禁止され,子供たちに配られる教科書は漢語で書かれている。それでもなお,母語を奪われつつあるさなかにあって民族アイデンティティを保ち続けようとつとめる人びとがいる。
「私が中国語を話せるのは私の能力と知識の表れだ。もし話せなかったとしても、それは私の恥にはならない。しかし私がチベット語を話せず、読み書きもできなかったら、それこそ一生の恥になる。なぜなら私は一人のチベット人だからだ」「もしあなたたちがチベットの民族衣装を恥ずかしいと感じるなら、着なくても構わない。もしチベット語を話すのが恥ずかしいなら、話さなくてもいい。でも、あなたたちの肉と骨はどうするのか?チベット人の家庭に生まれた事実は変えようがない。祖先はチベット人だ。でも言動を見る限り、あなたたちは民族を同化させられようとしている」
チベットNOW@ルンタ:ウーセル・ブログ「でも、あなたたちの肉と骨はどうするのか?」
「確かに、…確かに、私はちっとも流暢なチベット語を話せません。チベット語を書くこともできません。けれど、あなたと同じく、骨の髄から流れ出てくるある種のものがあります。この通り、私は先ほどバックステージでその小さい子が『天籟の愛』を歌っているのを聞いた時、全身の毛穴がすべて開くような感覚を味わい、特別な感動を覚えました。その実、私たち外にいるこのような、つまりチベット民族同胞は…」
(司会者がalanの頬をなでる)
「その実、私たちはとても故郷を愛しています。私たちもすごくすごくその言語を習い覚えたかった。でも、私たちの身の回りには実際そういう環境がなかったのです。ですから、私が言いたいのは、ええと、チベット語を話す方々、つまり、同胞たち、皆さんどうか、私たちの民族のこのようなものを必ず堅持し、必ず守り続け、発揚しましょう」
alanの涙: ちべログ@うらるんた
そして中国共産党はチベット仏教への介入を強めている。僧院への弾圧や宗教行事への監視は言わずもがなだが,特に昨年は14世ダライ・ラマが転生しない可能性に言及したことから,中国当局が転生をやめることは認めないと噴き上がるというシュールな光景が見受けられた(ええと,共産党って無神論なんじゃなかったっけ。東トルキスタンでは党員に礼拝を禁止してるくせにー)。14世が転生するとしてもしないにしても,そしてチベット人の意志がどうあれ,中国は「15世ダライ・ラマ」を擁立するだろう。14世は常々「チベット本土に転生することはない」と言明しているが,おそらくは中国は本土から「ダライ・ラマ」を選び出すはずだ。「11世パンチェン・ラマ」に対してそうしたように(11世パンチェン・ラマたるゲンドゥン・チューキ・ニマが解放されますように)。そしてチベット仏教は南北朝に陥る。まだ17世カルマパがおり,彼が若いのが幸いではあるが,それとて時間稼ぎにしかならないだろう。
信じがたいほどに露骨な同化政策も存在する。中国はチベットにおいて「統一」のために民族間結婚を奨励するとの由。民族の垣根を超えた愛,というのは一般論でいえば美しいものではあるが,しかしそれはこの状況においてはチベット人という一民族を消滅させようとしているといわれても仕方あるまい。かつてユーゴスラヴィア内戦で行われた性暴力と発想は同根だ。
そしてチベット本土において,もはや大規模なデモなどの意思表示は難しくなっているのではないかとの指摘もある。もはや声を上げる手段が彼らには殆ど残されていないのだ。身を焼くか,一人でデモを行って拘束されるか,といった,限られた手段しか本土のチベット人には存在しない。この絶望的な民族圧殺の光景を,わたしたちは目の当たりにしている。
さて中国国内の民族問題に関して,本ブログではブログ主の趣味によって主にチベット問題について語っているのだけれど,東トルキスタン(ウイグル)もまた深刻な問題であることは言を俟たない。こちらでは焼身のかわりにテロが相次ぎ,暴動が散髪し,治安当局が強化され紛争が“軍事化”しつつある。チベットと同じく,そこでは宗教が弾圧され,土地が収奪され,制度的な差別が温存され,民族間結婚が奨励され,何よりも民族への偏見が横溢している。そして漢人の流入によって人口比が書き換えられつつある。そこにあるのはチベットと同じ露骨な植民地支配の姿だ。こんな民族差別が許されていいはずがない。
だから。
Free Tibet & Free Uyghur!
彼らに,民族としての尊厳を。
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