猫の出産に立ち会う幸福

1967年12月生まれ山羊座・未年のAB♂、フリーのグラフィックデザイナーです。
春樹さんの作品は『風の歌を聴け』から始まり、すべて繰り返し愛読させて頂いています。
最愛は『世界の終り~』か、『国境の南~』、か『羊をめぐる~』か、決めかねます。

さて、朝日堂シリーズは機会がなく初めてのお便りになります。
春樹さんも猫好きのようですが、猫の出産に立ち会ったことはありますか? 
私はあります。
鵠沼海岸のボロアパートに住んでいたとき、真っ黒のメス猫(名前はクロ)が頻繁に遊びに来るようになりほぼ同居していました。
その猫がある冬の夜中に家を訪ねてきて私に「一緒にいて」と求めました。
私も察しがついたので真夜中でしたが抱いて毛布にくるまり、陣痛のたびに来る苦痛をお互い手を握りしめながら一晩過ごしました。
翌朝、彼女の初産が始まり、無事に6匹の仔猫を出産しました。
他の猫が何処で出産しているのか知りませんが、私はうちを選んでくれたことをうれしく思いました。
生まれた仔猫たちと月夜に散歩するのはとても満たされた気分になりましたよ。
20年前の素敵な想い出です。

コードネームください。
(フラワーデザイン、男性、47歳、グラフィックデザイナー)

猫の出産って素敵ですよね。小さな子供たちが次々に生まれてきて。僕も何度も付き添いました。六匹も生んだんだ。ずいぶん時間がかかったでしょう。でも素晴らしい体験です。出産を終えたあとの母猫って、ほんとうにすがすがしい、満ち足りた顔をしています。でも野良猫の子供って、だいたいほとんどが死んでしまうんです。生き残るのは一匹か、せいぜい二匹だということです。

昔うちの庭に住んでいた野良猫(雌)が出産するとき、去年生んだ(そして生き残った)娘が手伝いに来ていました。猫の社会って徹底した母系社会で、母娘の絆はずいぶん強いみたいです。

村上春樹拝