<ラグビーW杯>仙台落選 市の消極姿勢敗因
ラグビーの2019年ワールドカップ(W杯)日本大会の開催地が2日発表され、仙台市は選外となった。立候補した15都市のうち12が選ばれ、東北からは釜石市が入った。仙台市は招致への意欲をアピールできず、ラグビーファンや関係者を落胆させた。(スポーツ部・高橋均)
◎手は挙げたけど…復興途上で腰重く?
<高かった下馬評>
決定前の下馬評で東北の最大都市、仙台の評価は高かった。「選ばれない理由がない」。あるスポーツライターは言った。
被災地の復興をアピールできるという開催の意義があり、アクセスのいい会場であるユアテックスタジアム仙台が既にある。
かつて日本選手権を7連覇した新日鉄釜石(当時)の本拠地で、当初から有力視されていた釜石市と、メーン会場の新国立競技場(東京)との中間に位置し試合が組みやすいことや、4都市が立候補している九州との地域バランスの点からも有利だった。
唯一、関係者が懸念していたのが当事者である仙台市の消極姿勢だった。
<取り下げも示唆>
市は開催地申請期限の昨年10月31日になって重い腰を上げ、立候補を表明した。しかし、20億円超と言われる財政負担の軽減や、注目度の高い試合の開催など6条件を付けた。奥山恵美子市長は立候補表明の席で、条件が整わなかった場合、申請を取り下げる可能性まで示唆した。
市は東日本大震災からの復興途上にある。これ以上の財政や人員の負担はしたくないのが本音。「本気で誘致するなら、壁となる課題をどう乗り越えるかを考えるはず。市は課題が解決しなければ誘致できなくていいという姿勢だった」と、市と折衝に当たった宮城県のラグビー関係者は振り返る。
国内のラグビー人気は低迷しており、市内の誘致熱も高いとは言えなかった。こうした中で、宮城県ラグビー協会は昨年8月、誘致を求めて署名運動を展開し、計1万6000人の名簿を市に提出。市議会でも「仙台誘致推奨議員連盟」を設立し、8割以上の45人が参加した。
しかし、日本大会組織委員会の心証を変えるまでには至らなかったようだ。「市はやむなく形だけ立候補したとみられたのかもしれない」と、この関係者は推測する。開催地決定後の記者会見で、組織委の森喜朗副会長は「手は挙げたけれども、意欲のなかった所がある」と述べた。具体的な都市名は明かさなかったが、仙台を指すのは明らかだった。
<「夢 大事なのに」>
市内のラグビーファンが嘆く。「震災復興というのなら、釜石の方がもっと財政的に厳しい状況にある。そろばん勘定よりも、地域に夢を与えることが大事なのに…」
市庁舎内には2日夜、スクリーンが用意され、職員ら10人がインターネット中継に見入り、開催地決定の瞬間を待った。そこに奥山市長の姿はなかった。
2015年03月04日水曜日