CO2を回収・貯留する「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)」は将来の石炭火力発電に欠かせない重要な取り組みである。日本とオーストラリアの官民共同事業として2008年に始まった「カライド(Callide)酸素燃焼プロジェクト」が成果を挙げて2015年2月末に完了した。
このプロジェクトはオーストラリアの東部で運転中の「カライドA発電所」の設備を改造して、最先端のCCSを実証する事業である(図1)。カライドA発電所は出力3万kWの石炭火力発電設備1基で稼働している。
通常の石炭火力発電は空気で燃焼させる方式だが、カライドA発電所では酸素で燃焼させてCO2を高濃度で排出する方法をとる。さらに排出したCO2を液化して貯蔵・運搬することが可能だ(図2)。
酸素燃焼方式の火力発電を2012年6月から1万時間、CO2液化回収装置と組み合わせた実証運転を2012年12月から5500時間にわたって実行した。いずれも火力発電所の実機では世界で初めての試みである。
2014年10月から12月には、液化したCO2を1000キロメートル以上も離れた場所まで搬送して、地下の貯留層の中に圧入する試験にも成功した(図3)。CCSの一連のプロセスを実証できたことで、今後は日本とオーストラリアの両国で既存と新規の石炭火力発電所に導入していく計画だ。
オーストラリアは石炭の産出量が多く、日本の輸入量のうち約6割を占める。一方では地球温暖化対策のために、石炭火力発電に伴うCO2排出量の削減が世界的に求められるようになってきた。ともに石炭火力の比率が高い日本とオーストラリアが共同でCCSに取り組む意義は大きい。
このプロジェクトには日本から民間企業3社が参画した。全国各地で石炭火力発電所を展開するJ-Power(電源開発)のほか、火力発電設備を開発・製造するIHI、石炭をはじめ化石燃料の開発・輸入にかかわる三井物産である。日本の3社とオーストラリアの電力会社などが両国の政府から支援を受けて、約228億円の予算をかけて7年間のプロジェクトを実施した。
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