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相原歯科医院ニュース

歯が溶ける!酸蝕歯を知っていますか?

みなさんは「酸蝕歯(さんしょくし)」という言葉を聞いたことはありますか。むし歯菌の出す酸が歯を溶かす、ということはよく知られています。では、むし歯菌がなくても、身近で口にしている酸の食べ物や飲み物が歯を溶かす、ということはご存知ですか?今回は、むし歯・歯周病に継ぐ第3の口腔疾患のひとつとして世界的に注目され、増加しつつある酸蝕歯について知っていただきたいと思います。

酸蝕とは、文字通り酸により蝕まれる状態のことをいい、その状態になった歯を酸蝕歯といいます。通常人の歯は、歯のミネラル成分が溶け出す「脱灰」と、唾液に含まれるカルシウムなどがそれを修復する「再石灰化」を繰り返しています。飲食物に含まれる酸が脱灰を起こし、再石灰のサイクルのバランスが崩れミネラル分が溶け出した状態が続くのが酸蝕歯のしくみです。酸の影響を過剰に受けることにより、酸が歯の表層のエナメル質を溶かしだし、やがて歯のつやが消失し、すり減ったり、薄くなったり、穴があいたりしてしまうのです。むし歯との違いは細菌が関与していないということです。

酸蝕歯は古くは職業関連の疾患でした。精錬所、メッキ工場など塩酸、硝酸、酢酸など酸を扱う工場の職業病として知られていました。しかし、現在はこのような酸性雰囲気での労働環境は日本を含め先進国と呼ばれる国ではほとんどみることはありません。
この他に職業性のものとして、ワインを口にふくんでテイスティングするソムリエや、塩素消毒が行われているプールで日に何時間も泳ぐ水泳選手などがあります。かつて酸蝕歯は特殊な職業性の疾患でしたが、現在は酸性である清涼飲料の消費量の増大など食生活の変化により、大人子供を問わず、誰もがなる可能性がある疾患として注意が必要なのです。

酸蝕歯の原因

では、どのようなことが原因で酸蝕歯になってしまうのでしょうか。酸蝕歯の原因には内因性と外因性があります。

◆内因性の酸蝕

身体の内部から生じる酸が原因となります。内因性の病因として、塩酸からなる胃液が関連しており、反復性嘔吐、胃酸の逆流、食物の反芻癖などがあります。
通常、胃液が口腔内に逆流することはないですが、疾患、薬物、アルコールなどの作用により、口腔内に逆流します。pH1.0~2.0の強酸性である胃液が口腔内に逆流することにより、歯は簡単に溶けてしまいます。

◆外因性の酸蝕

身体の外から摂取する飲食物や薬剤が原因となります。酸蝕歯の可能性の高い飲食物とは炭酸飲料、柑橘類、サラダドレッシング、酢漬けの食品、梅酒、ワインなどです。強い酸を含む飲食物を毎日、頻繁に摂取する習慣があると、酸と歯が接触する時間が長くなり酸蝕のリスクが高まります。最近は健康意識が高まり、クエン酸や黒酢ドリンクを毎日摂る人も増えており、身体には良くても歯には悪いということもあるので注意が必要です。
その他にビタミン剤やアスピリン、鉄剤などの酸性の薬剤などが酸蝕を引き起こす可能性があると言われています。

身近にある酸性の飲食物、習慣的に摂取していないかチェックしてみましょう!

酸性・アルカリ性を示すpH値は、7が中性です。数字が7より小さいと酸性、大きいとアルカリ性になります。歯の表面のエナメル質は、5.5以下の酸性の飲食物に触れることで、軟化し溶けてしまうのです。

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酸蝕歯の予防と対策

内因性の場合は内科的疾患の治療を必要としますが、外因性の場合は酸蝕歯の原因となる強い酸性の飲食物を知り(上記表参照)、摂取方法に注意します。

①酸性の飲食物を口にしたら、その後すぐに水やお茶を飲む・うがいをする

原因となる酸が口の中に長時間残らないようにしましょう。回数が増えることも、結果的に時間が長くなるので、少しづつ飲むよりいっきに飲みきるほうが、リスクを軽減できます。摂取後は水やお茶で酸を洗い流しましょう。運動中やその後にスポーツ飲料を頻繁に飲む方、毎日晩酌でチビチビお酒を飲む方などは要注意です。

②酸っぱいものを食べたら、30分ほど歯磨きを控える

酸に触れて軟らかくなっているときに歯をゴシゴシ磨くことで、歯の表層が削れてしまいます。そこで、酸っぱいものを食べた後は、水・お茶を飲み、唾液の修復力で歯の軟化がおさまる30分ほど後に歯を磨きましょう。やわらかめの歯ブラシを使うのもよいでしょう。食後に柑橘類のフルーツを食べ、直後に歯磨きする方は気をつけましょう。

③フッ素入り歯磨き剤やジェル・洗口液を使う

フッ素は歯質を強くし、酸に溶けにくい歯にしてくれます。近年はたいていの歯磨き剤にフッ素が入っていますが、お使いのものの表示を確認してみてください。歯磨きのあとに、研磨剤の入っていないフッ素ジェルやフッ素洗口液を使うとより効果的です。

酸蝕歯の原因となる酸性の飲食物は、私達のとても身近にあるものばかりです。残念なことに、身体に良いことと歯に良いことは必ずしも一致しません。健康のためと積極的に摂取していたものが、実は歯の健康を害していたということがあるので注意が必要なのです。しかし、正しい知識を持つことで酸蝕歯のリスクは減らすことができ、歯を守ることができます。意識を高め、『健康な身体で、一生自分の歯で食事をする』という両方を目標にしたいですね。
酸蝕歯になってしまうと、現代の歯科医療では元の歯には戻せません。だからこそ予防が大切なのです。

(参考文献)
「歯が溶ける!?酸蝕歯って知っていますか?」 クイッテッセンス出版
日本歯科医師会雑誌 第62巻第12号