はじめまして!
West向けアプリのマーケティング全般を担当しているSCです。
日本のモバイルゲーム市場でご活躍されているパートナーの皆様の為に、もし欧米向けにもゲームを出したい又は興味がある方にとって有益になれればと思いまして、欧米のモバイルゲーム事情と傾向について簡単に説明させていただきます。
1. 市場規模
まずは欧米のモバイルゲーム市場の規模についてですが、国別のモバイルゲーム総売上高は、正式には公表されていないので、コンサル会社やアプリ市場データ分析会社等が公開しているデータからの推測を総合します。
全世界
2014年はモバイルゲームの売上増ペースが加速していて、ゲーム市場データ分析会社Newzooによると推定市場規模は2013年の175億ドルからなんと73%増の303億ドルに急成長しています。(想定外の売上増によりNewzoo社は2014年10月に2014年の推定市場規模を当初の217億ドルから250億ドルへと引き上げています。)
出典:Newzoo
北米・西欧
次に欧米市場の規模を推測しましょう。上記の上方修正前のNewzooの2014年7月の分析ですと、北米が2014年モバイルゲーム世界市場の22.5%、西欧が14.7%という割合になります(ちなみに日韓中の巨大マーケットを抱えているアジア太平洋地域のシェアは55.9%です)。同じ比率で上方修正された世界市場から計算しますと、2014年の北米市場で56億ドルで西欧で37億ドルです。これは合計93億ドルで、円安の現在では欧米モバイルゲームは1兆円規模の大市場となり、アジアや南米と比べると緩やかですがさらなる成長もまだ期待されています。
ラテン・アメリカ(メキシコと中南米)
2014年のラテン・アメリカのモバイルゲーム市場の総売上高は3.8億ドルであり、欧米や日中韓の国々と比べると一桁少ないのですが、前年比で60%増と大きく成長しています。ARPUも$0.52から$0.74に増えているので、成長市場としては期待できます。
出典:Newzoo
東南アジア
こちらもNewzooからのデータがあるのでおまけですが、主にインドネシア・マレーシア・フィリピン・シンガポール・タイ・ベトナムからなる東南アジアのモバイルゲーム市場も急成長をしており、2014年は前年比35%拡大して1億ドル市場になり、2017年には2億ドルを超えると予想されています。
出典:Newzoo
日本
皆さんがご存知の通り、日本は世界有数のスマホゲーム市場を持っており、2014年は3000-3600億円規模と言われています(比較の為にドル建てにしますと、約30億ドルで西欧全体よりは少し小さいだけの巨大市場です。特に欧米の人口と比べると日本の市場規模の大きさが際立ちます)。上記の情報といくらか差異はありますが、2014年9月時点でのアプリ売上の国別比率の推測値は以下の通りなので、日本と米国は似た市場規模と言えるでしょう。
http://gamebiz.jp/?p=126784
出典:AppAnnie
タブレットとファブレット
下記のDistimoデータの通り、2013年の段階では、欧米市場でのiPadでの売上はiPhoneとほぼ並ぶくらいになっていました。iPhoneの方が普及率は高いのでiPadのARPUの高さが伺えます。アプリゲームを欧米ユーザに楽しんでいただき売上を出すには、タブレット最適化は欠かせません。
出典:Distimo
ただし、2013年から台頭し始めたファブレットが、2014年9月(iPhone 6発売前)には既にセッション数がタブレットを上回っています。スマートフォンとタブレットの隙間の画面サイズは埋められ、スマートフォンからタブレットまで全画面サイズの対応が求められる時代になりました。
出典:Flurry
2. 2014年モバイルゲーム米国売上ランキング
次にアプリ市場データ分析会社AppAnnieの2014年の米国モバイルゲーム売上ランキングを見てみましょう。年間の合計値なので2014年リリースのタイトルは不利になりますが、それでもトップ10は見事に2013年以前にリリースされたゲームで埋まっていて、その半数以上はなんと2012年以前にリリースされている長寿タイトルばかりです。
出典:App Annie
ジャンルの傾向としては、Kingのカジュアルパズルゲーム、Supercell等のシミュレーションゲーム、そして日本では上位に見ないカジノゲームで独占されています。
3. 英語圏評論家のモバイルゲームランキング
それでは評論家は2014年リリースタイトルをどう評価していたのか、こちらはOS別のランキングを見ましょう。iOSはMetacriticが各専門サイト(モバイルゲームサイト、ゲームサイト、ITサイト、モバイルビジネスサイト、専門誌、一般紙等)の評論家の評価を合計していますが、Androidは同様のものがないので一般紙ではモバイルに力を入れていて影響力のある英ガーディアン紙のランキングで、それぞれ以下の通りです。
出典:metacritic
トップ10のうち、4タイトルがダウンロードランキング(有料アプリの場合は、有料ランキング)で最高1位を獲得していて、全体的にダウンロード数の多いタイトルばかりですが、売上ランキングのトップ10入りしたのは2タイトルのみで、なかなか評価を売上に結びつけるのが難しい事が伺えます。
出典:The Guardian
Googleの場合も、評価の高いゲームはダウンロードされているのですが、セールス最高位が50位以下という結果になっています。
2014年に評論家ランキング上位に入ったゲームは、以下の大まかな分類が出来ます:
- ビジュアルデザイン
- Monument Valley, Threes!, 80 Days, TwoDots 等のゲームはiOS 7やAndroid 4.4から主流になったフラットデザインにとても力を入れていて、時代に合ったスタイリッシュなゲームです。
- 大手メーカー・IP
- Hearthstone, Skylanders, Walking Dead は既存IPの魅力を上手くアプリにした作品です。
- インディーズ系
- VVVVVは個人、Threes!とBanner Sagaはそれぞれ3人チームで作られたオリジナリティあふれる究極のインディーゲームです。
- ゲーム会社以外
- Monument Valley, The Room Two, Clumsy Ninjaは元々アートスタジオやアニメスタジオだった会社が、ゲーム会社を設立して親会社の強みを活かした良作を出しました。
4. 現在のヒット作の傾向
2015年に入って目立つ新しめな人気タイトルをいくつか紹介します。
Kim Kardashian: Hollywood – Glu Games (iOS / Android)
ハリウッドセレブIPのゲーム化がパズルゲーム以外で特に女性ユーザにヒット。カジュアルゲーム並のARPUだが、推定DAU100-200万で売上を出している、King等のカジュアルパズルゲームと似たモデル。Candy Crush Soda Saga – King.com(iOS / Android)
Kingのキャンディクラッシュサーガの続編で、新しいギミック等はあるが、基本的には同系のマッチ3パズル。Crossy Road – Hipster Whale (iOS / Android)
Froggerの魂を受け継いだカジュアルゲーム。左右に動きながら道を渡り、車に轢かれずにどこまで進めるか挑戦する、エンドレスフロッガー。アプリ内課金はあるが、米国セールス上位にはなっていない。Trivia Crack – Etermax (iOS / Android)
アルゼンチン発、特に目新しい機能はなく質問の難易度も易しめのクイズゲームだが、ソーシャル機能が充実していて大ヒットしている(アプリ内課金の無料版と広告無しの有料版があり、共にダウンロードと売上ランキング両方の上位を獲得)。
ユーザ投稿での追加質問は受け付けているが、運営が精査してそのほんの一部をゲームに随時追加している。
5. 考察
欧米のモバイルゲーム市場の現状の簡単な説明でしたが、いかがでしたでしょうか。
欧米に限った事ではないと思いますが、上記のように欧米市場では、トップセールスのランキングと評論家やゲーマーが好評化するタイトルにはかなり乖離が見られます。トップセールスもトップ評価も、強力IPやパブリッシャに頼るか、洗練されたデザインやオリジナル性を上手く表現できているタイトルが目立っていますが、ゲームの種類はバラエティに富んでいる事が見えます。ゲーム会社以外の会社がアプリ・ゲーム業界に参入してきて成功している例が複数あり、なかなか興味深いです。
この投稿の本筋ではないのですが、急成長中の南米や東南アジアはまだまだ市場規模は小さいものの、将来性のあるマーケットではあり、最近だとTrivia Crackなどの成長地域発のタイトルが生まれてきていて、消費者以外にも可能性を見せ始めている市場です。
今回は米国のアプリマーケットのランキングのみを考慮しましたが、ゲームのみならずエンタメの欧米マーケット全般は米国に先導される傾向がありますので、ヒット作を出すにはいずれにしろ米国でヒットさせる事が大事になります。