相模鉄道:映画にドラマ、CMも ロケに人気の訳は…

毎日新聞 2015年02月26日 11時08分(最終更新 02月26日 12時53分)

2012〜2014年に相鉄戦をロケ地に使った主な映像作品リスト
2012〜2014年に相鉄戦をロケ地に使った主な映像作品リスト
相鉄いずみ野線で「ストロボ・エッジ」の撮影に臨む制作会社のスタッフら=相鉄提供
相鉄いずみ野線で「ストロボ・エッジ」の撮影に臨む制作会社のスタッフら=相鉄提供

 神奈川県内を走る相模鉄道(相鉄=そうてつ)の駅や車両をロケに使う映画やドラマが急増している。制作費切り詰めなどを目的とした制作会社からの“無理難題”にも柔軟に対応する姿勢が、業界内で好評を博しているからだという。駅数わずか25の鉄道会社が、今や映像業界関係者から「ロケなら相鉄」と言われるようになった背景は?【飯田憲】

 「はい、カット!」。相鉄いずみ野線のいずみ野駅(横浜市泉区)構内の階段で昨年9月、若手女優の有村架純(かすみ)さんが転倒するシーンが撮影された。今年3月に公開予定の映画「ストロボ・エッジ」の一幕だ。同駅ホームに撮影用の大型クレーンを持ち込み、十数人のスタッフが立ち会った。輸送人員が1日平均約62万人(同社広報調べ)と、他の大手私鉄線に比べて少ない同線だからこそ実現するロケだ。このほか他社ではまず許されない帰宅ラッシュに重なる夕方や、ホーム白線の線路側に入っての撮影も許された。

 映像撮影は同社のホームページから申し込みが可能で、使う施設、時間などを打ち込むと費用が算出される「簡易見積もり」が用意されている。例えば「駅構内を6時間使う場合」は約30万円だが、ロケ現場が相鉄と分かるようなシーンの有無によって値引きがある。こうした手軽さも奏功し、映画やドラマの撮影実績は年間30件を超え、2010年から昨年10月までに151作品に達した。

 「ストロボ・エッジ」の撮影に関わった制作会社「ザフール」(東京都中野区)の小沼秀剛さん(41)は「多くの私鉄は出演者がホームで走ることすら許してくれない。都心から近く、協力態勢やコスト面から業界内では『ロケなら相鉄』が定石です」と話す。

 鉄道会社によるロケ誘致は00年代前半から盛んになった。02年には東急電鉄が業界初の専門窓口を開設。東横線の夜間撮影や新型車両を含む回送電車内での撮影などを、同社のPRにつなげようという試みだった。しかし、撮影には利用客の安全確保や回送電車の運行ダイヤ調整などで多くの部署の協力が必要だった。その労力は小さくなく、東急は13年に「ロケ誘致以外の媒体でも広告効果は十分ある」(同社広報部)との理由から専用窓口を閉鎖。首都圏の大手私鉄他社も同様の傾向で、小田急電鉄は「自社のロマンスカーなどをPRする旅番組撮影が優先」、西武鉄道は「撮影を監視する人手が足りない」との理由から、ロケの許可には慎重だ。

最新写真特集