日本経済新聞は2月8日付朝刊に「もんじゅは正念場と心得よ」と題する社説を掲載した。その中で「もんじゅは、1995年のナトリウム漏れ事故以来、一度も運転していない」との記述があった。しかし、日本原子力研究開発機構(JAEA)の高速増殖炉もんじゅは、2010年5月に一度「炉心確認試験」を実施しており、「95年以来一度も運転していない」は事実誤認だった。
また、社説には「原子力機構は昨年11月、命令解除に必要な「機器保安計画」の報告書を原子力規制委に提出したが、点検対象機器の数を誤って報告していたため、12月に再提出した」という記載があったが、「昨年11月」は「一昨年(2013年)11月」の誤りだった。
JAEAの広報担当者も日本報道検証機構の取材に対し、「2010年に運転しており、『95年以来、一度も運転していない』との記述は正確ではない」と指摘するなど、誤りを把握しているが、日本経済新聞社に訂正を求めるなどの対応はとっていないという。
もんじゅは、高速増殖炉実用化のための原型炉。1992年に性能試験運転を開始し、1994年に初臨界に達したが、翌年のナトリウム漏洩火災事故で運転を中断した。2010年5月に性能試験運転を再開したものの、同年8月に炉内中継装置を落下させる事故が発生。その後は、点検漏れ問題も発覚し、2013年5月に原子力規制委員会から安全管理体制の再構築ができるまでの運転中止など2つの命令(保安措置命令と保安規定変更命令)を受けた。
JAEAは2013年9月と12月に、5月の各命令に対応するための報告書を原子力規制委員会に提出。その後、報告書の不備を指摘され、昨年12月、両命令に対する報告書を差し替えて提出した。さらに、今年1月28日、保安措置命令に対する報告書の一部に誤りが判明したため、近く報告書を補正して提出すると発表。JAEAは、今年に入って確認された誤りは、最終的に報告書を作成する段階の集計作業において発生したもので、未点検機器の処置や保全計画の見直し結果に関わるものではないと説明している。
社説:もんじゅは正念場と心得
日本原子力研究開発機構の高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)で不手際が相次いでいる。
3.11後の原子力政策の転換の中で、もんじゅは存続の意義を厳しく問われている。再稼働を目指すなら国民の信頼回復が何より必要だ。
原子力機構は、もんじゅにはもう後がない正念場であるとの危機感をもって、管理体制の見直しや安全意識の向上など組織改革に取り組む必要がある。
もんじゅは1995年のナトリウム漏れ事故以来、一度も運転していない。現在は運転再開に向けた準備を進めることすら原子力規制委員会が禁じている。準備作業の過程で点検の見落としなど保安規定の違反が相次いだためだ。
原子力機構は昨年11月、命令解除に必要な「機器保安計画」の報告書を原子力規制委に提出したが、点検対象機器の数を誤って報告していたため、12月に再提出した。それが1月になってさらに誤りが見つかり、再度の修正を余儀なくされた。
書類上の不備ではあるが、軽視はできない。ミスを繰り返す背景に、管理能力の不足など構造的な問題があるとみるべきだ。…(以下、略)…日本経済新聞2015年2月8日付朝刊
- 高速増殖原型炉もんじゅの性能試験再開について〔PDF〕 (日本原子力研究開発機構 2010/5/6)
- 高速増殖原型炉もんじゅ炉心確認試験の終了について〔PDF〕 (日本原子力研究開発機構 2010/7/22)
- もんじゅホームページ (日本原子力研究開発機構)
- 炉心確認試験に関するプレスリリース・お知らせなど (日本原子力研究開発機構)
- 高速増殖原型炉もんじゅ関連 (原子力規制委員会)
- 原子力科学技術委員会 もんじゅ研究計画作業部会 (文部科学省)
- もんじゅ「白紙化」報道 文科相「頓挫させてはならない」 (GoHoo 2014年2月8日付注意報)
- (初稿:2015年2月13日 17:45)