【ベルリン=赤川省吾】ナチスの戦争責任を直視するように訴え続けたドイツのワイツゼッカー元大統領の国葬が11日、ベルリンの大聖堂で営まれた。ガウク大統領らドイツ政界の要人のほか、欧州の王室関係者、英国のメージャー元首相など1400人が参列した。
名高いのは戦後40年の1985年5月8日の連邦議会(下院)での演説だ。「過去に目を閉ざすものは現在にも盲目となる」。貴族出身者らしい格調高い言葉遣いで戦争犯罪に真摯に向き合うように説いた。
ただ演説はナチスの残虐行為を反省するように諭しただけではない。さらに踏み込んだ発言が現在ドイツでは評価されている。敗戦を「暴力からの解放」と表現し、ナチス政権は「悪」という図式を鮮明にした。戦後世代を含めてドイツが永久に戦争責任を負う覚悟も示した。これが、その後の独政府の歴史観を決定づけ、対外イメージを大きく改善させた。
演説が生まれた背景には「歴史認識」を巡る当時の独政界の論争もある。保守系政党右派の「鉄かぶと団」は、ドイツだけでなく、連合国にも戦争を始めた責任があると主張。野党らから「歴史の修正だ」と批判を浴びた。ワイツゼッカー氏は国家元首として「過去への謝罪」を鮮明にし、この論争を終わらせた。
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