家康の名刀:ゲーム「刀剣乱舞」で人気、女性「本物ぜひ」
毎日新聞 2015年02月11日 20時56分(最終更新 02月11日 22時59分)
◇徳川美術館の「鯰尾藤四郎」、問い合わせや来館者が急増
名古屋市東区の徳川美術館が所蔵する徳川家康の名刀「鯰尾藤四郎(なまずお・とうしろう)」が、若い女性の間で人気を呼んでいる。刀剣を擬人化したオンラインゲーム「刀剣乱舞」に、同名の美男子キャラクターが登場したのがきっかけだ。女性のゲームファンから「本物を見たい」との要望が相次ぎ、同館は4月12日まで特別公開している。
学芸員によると、刀は長さ38.5センチで、鎌倉時代中期の刀工・粟田口吉光(あわたぐち・よしみつ)の作だ。なぎなたとして作られ、豊臣秀頼が愛蔵していたが、慶長20(1615)年の大坂夏の陣で大坂城とともに焼けたものを、家康が脇差しとして打ち直させたとされる。形がナマズの尾に似ていることから命名された。刀剣愛好家には知られ、同館は定期的に公開してきたが、関心を持つ層は限られてきた。
しかし、先月14日、動画配信などを手掛けている総合サイト「DMM.com」のゲーム部門「DMMゲームズ」が刀剣乱舞をインターネット上で公開すると、同館には下旬から「いつ公開しますか」との女性の問い合わせや、来館者が急増した。同館は今夏、家康の企画展で公開する予定だったが、急きょ前倒しした。公開を告げる同館のフェイスブックの閲覧数は、他の展示会などに比べ、4〜5倍の約1万5000件に達した。
同館によると、公開初日の10日には平日にもかかわらず、朝から多くの20代の女性らが来館し、名刀に見入っていた。並木昌史学芸員は「驚いている。若い女性に刀の存在を知ってもらい、魅力を楽しんでもらえれば」と歓迎している。
刀剣乱舞は、刀を擬人化した美男子キャラクターを育成しながら戦いを繰り広げる。DMMによると、ユーザー数は50万人を突破し、新規登録ができないほどの人気だ。キャラクターデザインを手掛けたゲームソフトメーカーのニトロプラスは「美術館とコラボして、さらに刀剣の魅力を知ってもらえるイベントが実現できれば」と話している。【式守克史】
◇徳川美術館
尾張徳川家第19代当主の徳川義親が設立した公益財団法人が1935年、同家の名古屋別邸跡に開館した。徳川家康の遺品を中心に、国宝9点を含む約1万点を所蔵している。
◇育成型オンラインゲーム
プレーヤーがキャラクターを育てながら展開していくゲーム。登録ユーザーはインターネット上で同じゲームを共有できる。旧海軍艦艇を擬人化した美少女キャラの登場する「艦隊これくしょん−艦これ−」が大ヒット中だ。