一言に背脂ラーメンと言ってもオールドスタイルからドロドロ系までその形は様々。醤油ベース、豚骨ベースなど意外に統一性はない。しかし地方によって背脂ラーメンの構成に特徴が見られ、都内の背脂ラーメン店を見ても歴史を追ってみると奥が深い。何はともあれ「背脂」というフレーズを聞いてテンションが上がるのは私だけではないはず。今回は選りすぐりの5軒をご紹介していきます。
元祖背脂ラーメンは千駄ヶ谷にあり!『ホープ軒』
ラーメンに興味のある方ならば一度は聞いたことがあるであろう、背脂ラーメンの代名詞的な名店。昭和35年に屋台でラーメンの提供を開始。お客のアドバイスを取り入れて誕生したのが「背脂ラーメン」。恵比寿の『香月』や浅草『弁慶』などたくさんの名店を輩出し、東京を始めとし、近郊に広まる背脂ラーメンの基礎を築いた。1日800杯を提供したこともあるという24時間営業の背脂レジェンドは今も健在。
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷2-33-9
アクセス:都営大江戸線(環状部)「国立競技場駅」A3口から徒歩約5分
もはや都市伝説と化した背脂モンスター『貴生』
東京の東部エリアまた千葉の東葛エリアで絶大な人気を誇る背脂ラーメン店。黒い丼とは対照的に、降雪のように降り注ぐ色白の背脂。その食感と甘みがこれでもかと押し寄せる背脂モンスターだ。草加、松戸などで最寄り駅のない街道沿いに店舗を構えるが、深夜営業に乗じて夜な夜な背脂ジャンキーが集まり、黙々と丼を平らげる様は、『ラーメン二郎』と並ぶ都市伝説として語り継がれる。
稔台店:千葉県松戸市稔台263-1
ぐるなび - とんこつ屋台ラーメン貴生稔台店(松戸/ラーメン)
燕三条系背脂ラーメンを独自解釈『麺屋 鶴若』
新潟出身の店主が、神奈川の名店『麺や食堂』にて経験を積み、地元の味を広めるべく新潟ラーメンを提供。中でも人気なのが燕三条系の「背脂中華そば」。背脂の甘味に重なる煮干特有の鮮烈な風味。麺は細めで燕三条のラーメンに比べ上品な仕上がりになっている。低温調理のしっとりとした鶏チャーシューをトッピングするなど、新潟の味プラスアルファの創作性にも注目。
住所:東京都台東区根岸5-25-1モナークマンション根岸1F
アクセス:東京メトロ日比谷線「三ノ輪駅」3番出口から徒歩約1分
京都系王道の背脂ラーメンを継承『一途』
京都背脂系ラーメンの老舗『京都銀閣寺ますたにラーメン日本橋本店』にて14年の経験を積み、満を持して開業。スープは食べ進むうちに味の変わる伝統の三層スープ。上層は背脂、中層は鶏白湯、下層には一味唐辛子が配置され、最終的に動物系の甘みを唐辛子が引き締める鉄板の組み合せ。九条ネギの鮮やかな緑色が彩りを添え、京都特有の味わいを演出する。
住所:東京都墨田区錦糸2-3-7小山ビル1F
アクセス:総武中央線・東京メトロ半蔵門線「錦糸町駅」から徒歩約4分
喜多方背脂ラーメンを提供する希少店『喜多方食堂』
喜多方ラーメンと言えばザ・中華そばのビジュアルが先行するご当地ラーメンだが、実は古くから背脂ラーメンが根付く土地柄というのはなかなか知られていない。そんな中、2013年に喜多方背脂ラーメンを引っさげて登場したのがこちらのお店。魚介がほんのりと香る醤油ラーメンを覆う大量の背脂。会津より取り寄せるプリプリの多加水麺が喜多方ラーメンである証だ。
住所:千葉県佐倉市表町4-1-1
アクセス:JR総武本線「佐倉駅」から徒歩約10分
ぐるなび - 喜多方食堂 麺や玄(八千代・佐倉・四街道/ラーメン・つけ麺)
「背脂」という食材は固体や液体などに姿を変え、ラーメンに豚の旨味を加える万能食材である。鶏ガラや魚介系食材との相性もよく、北から南まで全国のラーメンに使用される。今回は中でもわかりやすい粒状の背脂ラーメンを紹介しましたが、味の仕様は様々。たくさんの背脂ラーメンを食べていただき、自分好みの味を模索していただければ幸いです。
推薦者:石山勇人
自著「最新ラーメンの本」シリーズをはじめ「王様のブランチ!」や「週刊現代」など、様々なメディアでラーメン情報を発信するラーメン研究家。監修したラーメン本は20冊を越え取材軒数2000軒以上。インスタントラーメンの開発やラーメン店のメニュープロデュースなど活動は多岐にわたる。実家は20代続く神社の家系。自ら神主として奉仕し大晦日に年越しラーメンをふるまうという一面も。