福島第一原発事故2号機の危機に際して、吉田昌郎所長は「死」を覚悟し、「東日本壊滅」をイメージしたという。原子炉圧力容器を守る非常手段「SR弁の開放」も「格納容器ベント」もできない極限の状態の中で、東京電力の作業員たちはどのような行動をとったのか? 2号機の危機を克明に描いた『メルトダウン連鎖の真相』(講談社)の 第7章を3回にわたって転載する。今回は連載の最終回。
喫煙室の吉田
重苦しい空気に包まれた免震棟の円卓を、警備会社幹部の土屋は、呆然と見つめていた。もはやそこには、見慣れた統制のとれた原発の姿は微塵もなかった。
14日午前11時すぎに3号機が爆発して以降、土屋のメモには、それまでの3号機から一転して2号機の記述が目立つようになった。
「13:05 2Uへ対策開始」
「14:15 2Uのリミット近く 総動員で現状把握」
「16:00 情報のサクソウ リミット 後1H」
午後4時ごろには、円卓周辺から、2号機の燃料の先端に到達するのは、あと1時間というコールが聞こえた。それまでには、なんとか注水をしなければならないはずだ。
しかし、土屋にも、2号機の減圧がまったく進まず、水を入れられない状態に陥っていることがわかった。円卓中央に座る所長の吉田が幹部らに指示を出していたが、その顔は疲労が色濃くなっていた。
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