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ロサンゼルス港など西海岸の港湾では労働者が作業をわざとスローダウンし、運営会社に待遇改善を迫っている(写真:AP/アフロ)

 2月4日に発表された富士重工業の2015年3月期第3四半期決算。通期の営業利益見通しを過去最高の4100億円に上方修正するなど、飛ぶ鳥を落とす勢いで業績を伸ばしている。

 その中で、新しいリスク要因が浮かび上がった。北米向け部品の輸出の滞りだ。会見の場で富士重工の高橋充専務執行役員CFO(最高財務責任者)は「西海岸の港湾でコンテナの荷揚げ作業がスローダウンしており、米国の生産に支障を来しかねない」と明かした。

 米西海岸の港湾では昨年半ばから、港湾運営会社と労働組合の間で契約や労働条件を巡って対立が続いている。そのため、荷物の積み下ろしなどに遅れが発生している。

 その影響は昨年末から深刻になり始めており、日本でもケンタッキー・フライド・チキンやマクドナルドでフライドポテトの原料となるジャガイモが調達できないという事態が発生していた。それが、日本の基幹産業である自動車のサプライチェーンにも影響を及ぼし始めているのだ。

 富士重工の場合、スバル車に搭載するエンジンや変速機、駆動部品などのコア部品は日本国内で生産し、米国に輸出している。ロサンゼルスやロングビーチ、タコマなどの西海岸の港で荷揚げし、そこから陸路でインディアナ州にある北米の生産子会社、スバル・オブ・インディアナ・オートモーティブ(SIA)に運んでいる。

 SIAで生産する「アウトバック」や「レガシィ」は、好調が続く北米事業を支えるスバルブランドの稼ぎ頭。人気モデルで、ただでさえ在庫がほとんどない状態だ。エンジンなどが不足すれば工場の生産がストップし、それは即、業績を直撃する。

 放っておけば2月中旬からSIAの生産が止まってしまうため、富士重工は部品の出荷を航空便に切り替えた。群馬県で生産したエンジンなどを成田空港からシカゴまで航空便で運ぶことになる。一連の追加コストは実に1カ月で70億円に及ぶ。

 労使問題がいつまで続くかが読めないこともあり、富士重工は2015年3月期の業績見通しに1カ月分の70億円の負担増だけを織り込んだ。販売好調で大幅な増収増益となる中では影響は小さいとはいえ、自社ではコントロールできない出費となるだけに予断を許さない。


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