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スポーツ総合コラム
バラエティ番組などで見せる破天荒なキャラクターとは裏腹に、テニスとなると精緻な解説を見せる松岡修造さん。テニスというスポーツは幸運である。
photograph by AFLO
スポーツ・インテリジェンス原論

テニスの魅力を増幅する「修造さん」。
的確な分析解説と、プレー中の沈黙。

生島淳 = 文

text by Jun Ikushima

photograph by AFLO

 テニスの全豪オープンは男子がノバク・ジョコビッチ、女子がセリーナ・ウィリアムズの優勝で幕を下ろしたが、大会期間中、私には連日楽しみにしていることがあった。

 松岡修造さんの解説だ。

 昨年11月のツアー・ファイナルではテレビ朝日系列の解説を担当し、その冷静な分析力と情熱がいい形でブレンドされていると感じていたが、2週間に及ぶグランドスラムになると、より個性が明快に表現されていた。

 今回、私が強く印象を受けたのは次の3点である。

・的確なメンタル分析
・たった1球で流れが変わるテニスの恐ろしさ
・スポーツ中継の「基本」を押さえている

選手の心理をひも解き、試合の展開を解説する。

 選手のメンタルがプレーにどう影響するのか。松岡さんの分析がもっとも威力を発揮したのが、決勝のジョコビッチ対マレー戦だった。

 第1セット第6ゲームが終わり、ジョコビッチが4-2とリードし、自分のサービスゲーム。しかし15-30となり、明らかにマレーが盛り返していた。そこで松岡さんはいった。

「ジョコビッチは、前に出なきゃ、攻めなきゃ、そう思ってるんです。下がらない……」

 そう言葉を飲み込んだところで、なんとジョコビッチはサーブ&ボレーに出た。解説の読み通りとは、このことだ。

 しかし、その心理とサーブのコースを読んでいたのはマレーだった。見事なリターンを決め、ポイントを奪う。

 その後、松岡さんが、

「素晴らしいリターン……」

 ひと言しか言わなかったのが効いていた。感嘆していることが伝わってきたのである。

 大会全体を通して、松岡さんはコートに立っている選手の心境を、上手にひも解いてくれた。それはテニスの観戦力アップに欠かせない要素だと思う。

【次ページ】 わかりにくい試合の「流れ」も言葉に変える。

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