Updated: Tokyo  2015/02/09 11:59  |  New York  2015/02/08 21:59  |  London  2015/02/09 02:59
 

宣戦布告ない「ステルス」通貨戦争、ボラティリティ急騰がとどめ

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  (ブルームバーグ):世界通貨戦争は経済にじわじわと悪影響を与える静かな殺し屋かもしれないと、バンク・オブ・アメリカ(BOA)メリルリンチの世界金利・通貨調査責任者のデービッド・ウー氏は言う。

通貨下落は国内経済てこ入れを目指した金融緩和の副産物にすぎず、通貨戦争などというものは存在しないという声もあるものの、ウー氏はこれを否定する。「宣戦布告なしの通貨戦争が既に勃発したという共通認識が市場で形成されつつある」と同氏は先週のリポートで指摘。「これを戦争と呼ぶ理由は、一方に勝者がいれば反対側に必ず敗者がいるゼロサムゲームだからだ」と解説した。

通貨戦争についての一般的な解釈は、中央銀行が金融緩和によって自国通貨押し下げと輸出支援を狙い、これに貿易相手国が反撃、切り下げ合戦のスパイラルに陥るというものだ。

今年に入って既に十数行の中央銀行が金融刺激を追加している状況の中で、トルコのイスタンブールで開催の20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議では為替も議題に上るだろうが、過去2年のG20は為替相場の競争目的の利用という問題を公式に取り上げることを避けてきた。

ウー氏が今回の通貨戦争を「ステルス戦争」だと言うのはこのためだ。そしてその悪影響は既に金融市場を揺さぶっていると指摘する。

それは外為市場のボラティリティの高まりだ。同氏が為替レートの26週間の最高と最低の差から算出したボラティリティの指標によれば、ドルは円とユーロの双方に対して約20%変動しており、過去15年でこれより激しく動いたのは2008年のリーマン・ブラザーズ・ホールディングス破綻後の時期だけだった。

主要20カ国・地域の総生産に注目したもう一つの指標でも、このところのボラティリティは1997-98年のアジア通貨危機時とリーマン破綻後の2回に次いだ過去20年で3番目の高さだという。

ウー氏によれば、ボラティリティは一部の人が考えている以上の悪影響を世界経済に及ぼす恐れがある。

第1に、輸出企業のヘッジコストを高め利益率を下げる。第2に、企業を内向きにさせ貿易縮小の要因になる。直接投資の意欲もそがれるため経常赤字国の資本コストが高まる。「弱い通貨は短期的には恩恵をもたらすかもしれない」が、「皆が同じ競争をすれば結局は為替相場のボラティリティが高まるだけだ。これが世界の貿易と資本の流れを阻害する公算が大きい」とウー氏は結論付けた。

原題:Currency Devaluations Are Undeclared War With Volatility Soaring(抜粋)

記事に関する記者への問い合わせ先:フランクフルト Simon Kennedy skennedy4@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: James Hertling jhertling@bloomberg.net Christopher Anstey, 木下晶代

更新日時: 2015/02/09 06:45 JST

 
 
 
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