「技術」の本質は「言葉で表せない智恵」
田坂教授は、著書『知性を磨く 「スーパージェネラリスト」の時代』(光文社新書)の中で、これからの時代には、「思想」「ビジョン」「志」「戦略」「戦術」「技術」「人間力」という「7つのレベルの思考」を垂直統合した「スーパージェネラリスト」が求められると言われています。
この第13回では、第六の「技術」のレベルの思考を、いかに深めていくべきかについて、伺いたいと思います。
田坂:そうですね。今回は、「技術のレベルの知性を、いかに磨くべきか」ですが、このテーマは、興味を持たれる読者が多いでしょう。
前回は、「戦術のレベルの知性を、いかに磨くか」について述べましたが、この「戦術」を実行に移すとき、直ちに問題になるのが、「技術」です。
「技術」というのは、英語で言えば、「スキル」や「センス」「テクニック」や「ノウハウ」と呼ばれる能力のことですね?
田坂:そうです。そして、日本語では、「企画力」や「提案力」「交渉力」や「営業力」、さらには「プレゼン力」や「プロジェクト・マネジメント力」など「……力」といった言葉で語られる能力でもあります。
いずれにしても、「戦術」を実行に移すとき、プロフェッショナルとして、必要な水準の「技術」を持っているか否かが、深く問われます。
どれほど優れた「戦略」を立案し、どれほど卓抜な「戦術」を考えても、この「技術」が伴わなければ、我々は、目の前の一人の「人間」を動かすこともできず、目の前の「現実」を変えることもできないからです。
たしかに、その通りなのですね……。また、耳の痛い話ですが……(苦笑)。
では、どのようにして、その「技術」を身につけ、「技術」のレベルの知性を磨いていけばよいのでしょうか?
田坂:そのことを考えるとき、最初に理解しておくべきことがあります。
「技術」の本質は、「知識」ではなく、「智恵」である。
すなわち、以前、この連載で述べたように、「技術」の本質は、「言葉で表せない智恵」であり、それは、決して、「言葉で表せる知識」ではないのです。それゆえ、「技術」とは、決して「書物」で学べるものではなく、「経験」を通じてしか学べないものなのです。
そのことは、この連載の第7回で、教えて頂きましたが、要するに、スキルやセンス、テクニックやノウハウといった「技術」を身につけるためには、「経験」を積むことが不可欠だということですね?
田坂:その通りです。ただ、正確に言えば、「経験」を積んだだけでは、「技術」は身につきません。
ええ……? それはなぜですか?