独断と偏見で選ぶ今年の論文ベスト5をまとめてみようかと思います。
もちろん、完全な独断と偏見です。
ショートサマリーはつけておきますが、興味があれば是非本文までアクセスして下さい。一年間読んで頂き有り難うございます。
第5位
論文:終末期腎不全に対するACE/ARBの効果 - 栃木県の総合内科医のブログ
これは結構インパクトのある台湾発の 前向きコホート。シンプルなメッセージとしては、「Cr>6.0g/dLの末期腎不全患者でもACE/ARBを使用していると透析までの時間を引き延ばすことが出来る」ということ。もちろんK関連の合併症は多いわけですが。これを見て、普段自分達が見て腎臓内科referを考えるCr 4-5g/dL前後の患者さんでも継続出来るようになりました。とはいえ、怖いですが・・・
第4位
論文:PEGはラクツロースより肝性脳症の治療に有効である - 栃木県の総合内科医のブログ
これも実臨床に使えそう。 まず大事なことは肝性脳症の治療としてのアミノレバンは何の根拠もないということ。害すら報告されています。分枝鎖アミノ酸製剤の内服と点滴は明確に区別しましょう。
studyとしては非常に小規模なRCTではありますが、現在の肝性脳症のgold standardである「ラクツロース(モニラックⓇ、ピアーレⓇ)と比較して、PEG(ニフレックⓇ)の下剤が、改善までの時間が早かった」という結果でした。もちろん、ニフレックを急性期の肝性脳症に・・・はオニ!という感じもしますが、今後の大規模な検証が待たれるところです。
第3位
論文:日本人高齢者に対する低容量アスピリンの一次予防効果 - 栃木県の総合内科医のブログ
これは人気記事ランキングでも上位でした。日本発の糖尿病/高血圧/脂質異常患者に対するアスピリンの一次予防の効果を検証した大規模PROBE試験。日本PROBE試験好きですね。
結果としては、「比較的リスクの高くない日本人に対するアスピリンの一次予防は心血管関連の複合アウトカムを減らさず、出血性の有害事象が増える」というものでした。残念ながら中間解析で早期終了。
面白かったのは、editorialからなんで腸溶錠なんて使ってるの?って突っ込まれていたこと。海外ではバイアスピリンⓇなんてあまり使ってないんですね〜。
第2位
論文:糖尿病患者のACE阻害薬とARBの効果比較 - 栃木県の総合内科医のブログ
糖尿病と高血圧合併症患者の降圧薬選択の話題。JAMAのメタ解析です。直接比較試験ではありませんが、過去のRCTの個人データを元にACE-iとARBを比較して、心血管死亡と全死亡を比較しています。
結果は、「ACE-iはプラセボと比較して全死亡・心血管死亡を有意に減らすが、ARBはプラセボと同じ効果だった」とのこと。これは行動を変えるもしくは後押しする研究でした。
第1位
論文:無症候性ピロリ感染患者の除菌による胃癌抑制効果 - 栃木県の総合内科医のブログ
これはBMJのメタ解析。第1位にはしましたが、もちろんまだまだ課題の多い部分です。日本全体として1億ピロリ菌総除菌計画!?が推進されている中、どのくらい効果があるのかなあ?と。
メタ解析では統計学的には胃癌を減らす(HR 0.66:0.46-0.95)という結果でNNT 15でしたが、イベント発生数が少ない研究が多い事、セカンダリーで解析した胃癌死亡や全死亡は有意差が無かったあたりがかなりビックリしました。
今後の大規模検証が待たれますが、どうなることやら。この辺りもリスクーベネフィットを患者さんとシェアしていく時代になるでしょうね。