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大学院に聞きました! Vol.1 
早稲田大学大学院スポーツ科学研究科

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元巨人軍・桑田真澄氏の入学で大きな話題に。
スポーツ界をリードする高度職業人を養成

 早稲田大学大学院スポーツ科学研究科は、もともと有名なトップアスリートや各種のスポーツ関係者が入学することで知られていたが、今年は元巨人軍投手の桑田真澄氏の入学で脚光を浴びることになった。そこで同大学院を訪問して、研究科長の中村好男教授(教育学博士)に研究科の内容を聞いた。

社会人も対象としたスポーツ科学の大学院


研究科長 中村好男教授

 このスポーツ科学研究科を紹介する前に、高卒の桑田氏がなぜ同大学院に入学できたのかを紹介しておきたい。大学院の入学資格は、学士号だけでなく、「大学院において個別の入学審査により、大学を卒業とした者と同等以上の学力があると認めた者」という規定がある。つまり、大学院が入学希望者の社会での実績などを勘案して、個別の入学審査を行い、大卒と同等と判断されて初めて大学院入学審査の対象となるわけだ。
 数は少ないが、高卒で大学院に入学したのは桑田氏が初というわけではない。従って、このスポーツ科学研究科に限らず、ビジネススクールなどでも可能性はある。また、修士課程ではなく、いきなり博士課程後期に入学した社会人もいる。ただし、いずれも社会で優れた研究や実績を挙げている人が対象。誰でもOKというわけではないのである。
 中でも、桑田氏が入学するスポーツ科学研究科トップスポーツマネジメントコースの入学要件は、日本代表などのトップレベルで活躍実績が3年以上、またはスポーツビジネス関連企業で通算5年以上の実務経験など、なかなか厳しい。
 これはトップスポーツマネジメントコースが「マチュア(成熟した)な人が入学対象。社会人としてすでに活躍している人のキャリアをさらに伸ばす触媒になる」(中村好男・研究科長)ことが目標だからだ。要するに大卒でも簡単に入学できるわけではないのである。

 このコースを紹介する前に、スポーツ科学研究科の全体像を紹介しておきたい。
 まず、修士課程2年制と博士後期課程で、スポーツ文化研究領域、スポーツビジネス研究領域、スポーツ医科学研究領域、身体運動科学研究領域、それにコーチング科学研究領域の5分野がある。学生及び社会人向けとなっており、主に所沢キャンパスで学ぶ。
 特にコーチングはビジネス社会でも話題になっているため、コーチング科学研究領域に興味を持つ人もいるはずだ。中村研究科長も「独自の方法論がまだ確立されていない分野ですが、その仕組みができれば大発展するでしょう」というだけに、博士後期も含めて研究次第では先行者メリットを得られる可能性がありそうな分野ではある。

社会人を前提として、都心で学べる修士課程1年

 この修士課程2年制に加えて、「社会人向け」と限定した修士課程1年制が設置されている。都心の早稲田キャンパスで夜間と土曜を中心に開講するため(一部科目は東伏見キャンパス)、仕事と並行して学ぶことができる。2年制でなく、1年で修了可能ということも大きなメリットだ。
 トップスポーツマネジメントコース、スポーツクラブマネジメントコース、健康スポーツマネジメントコース、介護予防マネジメントコース、学校体育マネジメントコースの5コースが設置されている。このうちトップスポーツマネジメントコースに桑田氏が入学するのだが、すでにプロ野球選手、サッカーのJリーグ選手などから、テレビ・新聞・広告代理店・商社などのスポーツ関係者、それに公認会計士なども入学したという。具体的な名前は差し控えるが、日本のプロスポーツ界のトップと直接的な関係者が集まる希有な大学院といっていい。
「すでに現場のデータを持っている人たちであり、問題意識もそれぞれ抱えています。ですから、私たちの役割はスポーツ科学のマネジメントスキルを提供することと、修士論文(リサーチペーパー)の基本的な書き方を教えること。具体的には、彼らのデータや抱えている問題に対して、こんな見方や考え方ができますよというキャッチボールを行うわけですね」
 演習・講義科目は、トップスポーツマネジメント演習、トップスポーツビジネス特論、スポーツの法と契約、スポーツファイナンス特論、スポーツプローション特論、トップスポーツマネジメント特論。これらの授業に出席しながら、論文を書き上げていくわけだ。

こんな時代こそ、スポーツマネジメントが必要

 「サニーサイドアップ(スポーツ選手のマネジメント会社)の次原悦子社長も修了生。中田英寿氏のマネジメント経験などを修士論文としてまとめましたが、これは『NAKATAビジネス』として出版されました」
 一般の社会人も同じだが、日々の仕事は目先のことに追われがちで、大きな観点から、あるいはビジネスモデルとして客観的に考える機会は乏しい。書いてまとめるという前提で、1年間じっくりと自分の仕事と向き合えることも、社会人が大学院で学ぶ得難いメリットなのである。また、トッププロや現場関係者が教室に集まるため、実体験を通した様々な意見交流ができることも魅力になっているはずだ。
「スポーツの経験も知識もない人がプロを管理する立場になるなど、日本のプロスポーツ界はまだまだ改革の余地があります。この大学院が直接的に関与することなんてできませんから、実績があり、意欲がある人たちに学んでいただくことで、より良い環境や体制づくりに寄与したいと考えています。このため、一般に大学院では指導教員との関係が密接なのですが、非常勤の教員や外部の教員も多く、カリキュラムが組織的なのも際立った特長ですね。研究課題はそれぞれ違うので、それを特定の鋳型に収めるのではなく、自由に発展できるような教育体制を意識しています」
 だが、折からの大不況で、アイスホッケーなど名門の社会人チームが次々に廃止されるなど、プロ・アマ含めてスポーツの環境はかなり厳しい。
「むしろ、こういう時にこそ、スポーツマネジメントが必要なんですよ」と中村研究科長は力を込めて語ってくれた。

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