連載
男色ディーノのゲイムヒヒョー ゼロ:第310回「“つかみ”と“持続性”」
それにしてもゲイムって,自分の中で攻略法が確立され始めると,がぜん楽しくなってくるわよね。もちろん,何も知らない状態でプレイしても楽しいゲイムはたくさんあるし,それに越したことはないんだけど,より深いところで楽しくなってくるのは,ゲイマー冥利に尽きると思うのよ。「これこれ! これを味わうためにヤってんだ!」って気分になる。
軽い話からいきなり本題っぽいことに入って恐縮だけど,実はここにジレンマがあってね。あ! 今週は新しいタイトルの話はしないわよ。なぜなら,新作をプレイしてないから! そもそも,毎週新作をプレイするって約束してるわけじゃないけどな。でも,ゲイムはプレイしてるわよ。
で,ですよ。今週は私のゲイムに対するスタンスの話なんですよ。今はちょいと休んでいるんだけど,私はプロレスでは商品を提供する側なの。でも,ゲイムでは消費者にすぎないわけ。つまり,エンターテイメントに関しては,両方の立場から語ることができると思っているのね。だからこそ,エンターテイメント商品におけるジレンマが分かるの。
まず提供する側の立場で言うと,商品を消費者に購入していただいた時点で商売としては成立しているの。極端な話,内容なんて良かろうが悪かろうが関係ないの。金銭のやり取りさえ終わってしまえば,商売として成立しているわけだからね。
ただし,次に同じような商品を売ろうとした場合(プロレスの場合は次の大会のチケット,ゲイムの場合は次の作品),消費者からの信頼が必要となるわけ。信頼を得るためには,先に売った商品の内容の良し悪しが大きなカギになるのね。
では何がジレンマなのかというと。“つかみ”と“持続性”。このバランスが崩れつつあるっていう話なの。先に言っておくと,どちらがいい,どちらが悪いって話じゃないのよ。現にこうなってるっていう話であって。それを踏まえて読んでいただけると幸い。
本題に入るわね。私が持っている信念として,エンターテイメントは,新規顧客をどれぐらいつかめるかが重要だって話は,まあまあこの連載でしてると思うの。これがいわゆる“つかみ”。一言で“つかみ”と言ってもいろいろな要素があって,キャッチーかどうかであったり,興味を抱かせる情報を与えられるかだったり。要は,購入動機の部分なのね。これがうまくいくと,経済活動がうまく回るの。
そして,購入動機の中の一番といってもいいぐらい重要なのが,我々の業界で言うところの“はやってる感”なのね。「自分もこの波に乗らなきゃいけないんじゃないか」「そんなに面白いっていうのであれば試してみようか」みたいな気に,どれだけさせられるか。
ちょっと話はそれるけど具体的に言いましょうか。大会場でそこそこの客入りで,そこそこの収入がある場合を「ケースA」としましょう。そして,小会場でギッシリの客入りでも収入としてはあまり多くはない場合を「ケースB」とします。ケースAだと,まあお金に関しては効率はいいわね。でも,ケースBのように規模は小さくても会場に人がギッシリ入っていると,基本的には盛り上がりやすい。あ,あくまでプロレスの話ね。では,興行主としてどちらをチョイスするのが正解なのか?
……答えは,「分からんわそんなもん」。だって私,経営者じゃないし興行主でもないんだもん。分かるわけないわ。ただ,これだけは言える。大会場をギッシリにしたほうがいい。なので正解としてはまさかの「ケースC」ですね。
でもこれ,冗談でも何でもなくて,資金と現実をどれぐらい正確に把握してやりくりするかが,経営者の才覚でしょ? ケースAで資金をひねり出しつつ,ケースBで“はやってる感”を演出する。もしくは逆にケースBで“はやってる感”を演出しつつ,ケースAで資金を確保する。で,最終的にケースCにたどり着く。このどちらかが理想的なんだと思う。
これを実現するために,その都度,適切なものを間違えずに選択していくのが正解なんじゃないかしら。まあ,偉そうに言ったところで私は経営者じゃないから,実際のところは分かんないけど。
話を戻すわね。ケースBのように,飢餓感があればはやりやすいという面はあるわよね。古くは「たまごっち」,最近だとおもちゃの「妖怪ウォッチ」がそうでしょ。どこに行っても売ってない。そうやって必死に探して手に入れると,普通にさらっと手に入れるよりも満足度も高くなるわけ。
だから私は,“はやってる感”をどれだけ出して“満足度”をどれだけ上げるか,ここまでがセットで“つかみ”だと思っているわ。ゲイムの場合,買ってプレイしてみて「面白い!」って感じるところまでが,“つかみ”ね。
最初に言ったとおり,商品の内容には関わらず,売買が成立した時点で経済活動は終了してるのよ。でも,内容でつかまなければ次は同じようには売れないわけで。だから売れば終わりではなく,ちゃんと一定の満足度を与えるまでが“つかみ”。言い換えれば,新規顧客を満足させるまでが“つかみ”という感じかしらね。
これは非常に重要なのよ。古参に加え新規を取り込んで拡大していく。抜ける人がいても,それより入ってくる人のほうが多ければ規模は大きくなる。こういうサイクルでエンターテイメントの経済活動は成長していくわけだから。
ここまでが,提供する側としての私の意見。ここまではジレンマはないの。10から1抜けても3増えれば元の10より大きくなるっていうシンプルな話だから。高校時代,数学で8回連続0点を取った私でも分かる計算式。
もちろん,ゲイムをプレイして満足はしてるのよ。でも,深いエクスタシーにまでたどり着いているのか? という疑問が浮かび上がってきたのね。プレイすればするほど面白いタイプのゲイムもあるはずなのよ。それが“持続性”なのね。
“つかみ”で満足度のノルマはクリアしてる。でも,そのゲイムが持つ“持続性”にまで目を向けられているのか? という自問自答。もっと簡単に言うと,作り手が「ここまでプレイしてほしいな」というところまでプレイできているのか? 「ちゃんとクリアできているのか?」という。
ゲイムは何も悪くない。タイトルにもよるけど,最近は容量も大きくなってるから,基本的には続けて遊ぶと面白くなってくるようなゲイムのほうが多いと思うの。で,結局,何がジレンマかというと「最終的に決めるのはプレイヤー」って部分なの。続けるも続けないも,その自由が提供される側にあるのね。
別に,“つかみ”で満足して次に移ってもいいし,続けてより深い満足を得る選択をしてもいい。どっちが正しいなんてない。よってケツ論なんて出ない。強いて言うなら,楽しんだ者勝ち。
……ここまで作品を紹介せず,最終的に何が言いたいのかというと。もうちょっと,今まで以上にゲイムをリスペクトしよう,ということですよ。私は「お客様は神様だ」とは思っていなくてね。厳密に言うと,それは提供者が思うことであって,消費者が自らそう名乗るようなものじゃないだろって思っていて。だいたい,自分のことを神様だと言う人はアレな人が多いしな。
私は提供者でもあるし消費者でもある。だから,提供者が消費者に敬意を払うのは当然だとして,消費者の側も提供者に敬意を払っていいんじゃないかと思うのよね。自分には作れないものを,お金で手に入れられるようにしてくれているわけだから。で,ゲイムの場合は,こちらが思っている“つかみ”以上の深い面白さを提供してくれているんだから。
私,自分を提供者として考えた場合,“つかみ”は意識しているし,それなりの満足度も与えられていると思うのね。ただ,ゲイムほどの“持続性”だったり“深み”を与えられているんだろうか。ゲイムに負けてるんじゃないかって。でも! 負けたくない気持ちがあるうちは大丈夫。まだ負けてない!
……ということを,週末に考えていたっていうお話です。プロレスラーって試合してないとホラ,いろいろと考えちゃうからね。ぶっちゃけこの原稿を書いている今の時点で,病院での検査の結果が思ったとおりあんまり良くなかったもんだから,精神的に沈んでるのよ。どっちかっていうとケガそのものよりも,試合をできないことに。
今なら「はじめてのおつかい」を見て泣けるかもしれん。「火垂るの墓」でも泣けなかったのに。でも! 知ってるの。ちゃんと立ち上がるのよ,私。だってプロレスラーだもん。最近イヤなことがあった人は,この連載に注目しておいてちょうだい。来週には華々しい復活を遂げてるからね! ぶっ潰してやるオラ! 潰れねえつってんだろエー! また来週だオイ!
今週のハマりゲイム
(文字通りゲイムスロットにハマっているゲイム)
PlayStation 4:「EA SPORTS UFC」
PlayStation 3:「実況パワフルプロ野球2014」
PlayStation Vita:「大江戸BlackSmith」
PSP:「サモンナイト5」
Wii U:「ゼルダ無双」
Wii:「ドラゴンクエストX 目覚めし五つの種族 オンライン」
ニンテンドー3DS:「ダービースタリオンGOLD」
Xbox 360:「剣の街の異邦人 〜白の王宮〜」
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