Updated: Tokyo  2014/11/18 20:00  |  New York  2014/11/18 06:00  |  London  2014/11/18 11:00
 

【クレジット市場】物価予想が逆戻り、黒田緩和に限界とインベスコ

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  11月18日(ブルームバーグ):日本銀行が進めてきた異例の金融緩和による物価引き上げ効果に金利市場が見切りをつけている。運用資産が90兆円を超える米インベスコは、黒田東彦総裁に残された追加緩和の余地は乏しいとみている。

メイタン・トラディションのデータによると、将来の物価見通しを映すインフレスワップの2年物金利は17日に1.11%と、日銀による異次元緩和の導入前の昨年2月以来の水準に低下。5、6月には2.52%とデータでさかのぼれる2008年3月以降で最高水準だった。

日銀は昨年4月に2%の物価目標を2年程度で達成するため、マネタリーベース を積み増す「量的・質的金融緩和」を導入した。先月末には追加緩和で、残高増を従来の年60兆-70兆円から約80兆円とした。10月末の実績は259.5兆円と年初来28.6%増加したが、7-9月期の実質国内総生産(GDP)は2四半期連続のマイナス成長に陥った。

インベスコで債券運用の総責任者を務めるグレゴリー・マックリーヴィ氏(52)は11日、都内でのインタビューで、日銀は景気と物価を支えるため「来年にはさらなる追加緩和に踏み切る可能性がある」と予想。ただ「バランスシート拡大にも限界があるのではないか」とも述べ、異次元緩和の第3弾は実効性が従来より弱い「象徴的な追加緩和になるかもしれない」との見方を示した。

同社の運用資産は先月末時点で7903億ドル。円換算すると約92兆円で、世界最大規模の年金基金である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF )の7割超に相当する。うち、米アトランタを本拠地とする債券部門は9月末に2411億ドル。東京を含む11カ所で運用の専門家を160人抱えている。

流動性のわな

日銀は公開市場操作を通じて金融機関から国債などを買い入れてマネタリーベースを増やしている。国庫短期証券(TB )の流通利回りが需給逼迫(ひっぱく)で9月からマイナス圏で推移する中、先月末の追加緩和では短期国債などは残高維持とする一方、長期国債の残高増は年50兆円から約80兆円に拡大した。

毎月の買い入れは従来の6兆-8兆円から8兆-12兆円に増加。日銀の購入額を年換算すると、政府が今年度に入札を通じて機関投資家に販売する国債の市中発行額155.1兆円に対し、最大で9割超にも及ぶことになる。国債・財融債・TBを合わせた日銀の国債保有額 は6月末に215兆円。発行残高1013兆円の21%を占める最大の保有主体だ。

米ボヤ・インベストメント・マネジメントのシニア・エコノミスト、タンウィール・アクラム氏は「日銀の行動は相当な間、国債利回りを極端な低水準に保ち、短期金利をゼロ近くのままにしてしまうだろう」と指摘。「消費増税によるベース効果が2015年4月に切れるので、インフレ圧力は衰える傾向にある。資産価格を確実に引き上げることに失敗することは流動性のわなに陥る可能性を示唆している」と述べた。

「金融抑圧」の実態

長期金利の指標となる新発10年物国債利回り は先月末の追加緩和直後に0.435%と、量的・質的緩和の導入翌日に当たる昨年4月5日以来の水準に下げた。導入直前から昨日まででは7ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の低下。2年債利回りは17日に0.01%と、その1カ月前に付けた過去最低水準の0.005%に迫った。

インベスコのマックリーヴィ氏は、日銀の金融緩和は2%の物価目標を達成するためだが「隠れたアジェンダには長期金利の上昇を抑制する狙いもあるのではないか」とみる。「膨大な公的債務を抱える政府の観点からは、国債利回りが名目成長率を下回るのが重要だからだ」と説明。「一種の『金融抑圧』という実態はある」と述べた。

ブルームバーグ・ニュースが6-11日にエコノミストら30人に聞いたところ、日銀が来年7月までに追加緩和するとの回答は9人にとどまった。8人は追加緩和はないと予測。2%の物価目標を来年度に達成できるとみる向きは3人いた。過半数の18人はなお、日銀が「2年程度で2%」の公約を見直すと予想している。

7-9月期の実質GDP 速報値は前期比年率1.6%減。市場予想の同2.2%増を下回った。全体の約6割を占める個人消費が前期比0.4%増と予想の半分程度、設備投資も0.2%減と低迷。ゼロ%台半ばとされる潜在成長率を下回り、物価の押し上げには逆風だ。

記事に関する記者への問い合わせ先:東京 野沢茂樹 snozawa1@bloomberg.net;東京 石川茉莉子 mishikawa9@bloomberg.net

記事についてのエディターへの問い合わせ先: Garfield Reynolds greynolds1@bloomberg.net 崎浜秀磨, 青木勝, 山中英典

更新日時: 2014/11/18 13:50 JST

 
 
 
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