ドイツ:コール元首相の伝記波紋 政治家らの批判多く

毎日新聞 2014年11月18日 10時54分

 【ベルリン篠田航一】10月に出版されたドイツのヘルムート・コール元首相(84)の伝記が波紋を広げている。伝記の中でメルケル首相を「昔はナイフとフォークをきちんと使えなかった」と暴露するなど、他の政治家らの批判が多く盛り込まれているためだ。

 著者は過去にもコール氏の回顧録を手掛けたジャーナリストのヘリベルト・シュワン氏らだが、コール氏側が「許可なく出版された」として提訴するなど、騒動は過熱している。

 伝記は「遺産」と題され、発売1カ月で20万部を売り上げるベストセラーになっている。シュワン氏は2001〜02年にコール氏を600時間以上インタビューしたが、出版までの間に2人は仲たがいし、コール氏がインタビューを録音したテープの返還をシュワン氏に求めていた。

 ケルン地裁は13日、コール氏側の訴えを認めて出版差し止めを認める仮処分を出し、シュワン氏に対し伝記中の100カ所以上の発言の引用を禁じた。

 地裁は一方で、既に書店に並んでいる伝記の販売は許可した。これに対し出版社側は上訴している。

 1989年11月の「ベルリンの壁崩壊」から25周年にあたる今年は、東西冷戦終結に尽力したコール氏の過去の別の伝記「壁崩壊からドイツ統一まで−私の記憶」も再販された。10月8日にフランクフルトのブックフェアに出席したコール氏は「こちらの本には真実が書かれている。この本を読んで」と呼びかけ、騒動になっている本との「差別化」を図った。

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