まさかまさか、自分の元に見合い話なんざが舞い込んでこようとは思いもしなかった。
「付き合っている相手はいる」と母親に公言はしていたし、ましてや自分の年齢も25歳というまあまあ微妙な若さ。
平成生まれの自分に見合い話だなんて、お見合い結婚を否定つもりは勿論ないのだけれど、「一体いつの時代の話なんだろうか」と思ってしまう自分がいる。
近所の昔からの知り合いや、親戚が持ち寄ってくる「お見合い話」だなんてのは自分には全くもって縁がないものだと思っていた。
しかしながら、どうやらそうでもなかったらしい。
「ルナにお見合い話があるんだけども……」
仕事から帰宅した私に、母が悪びれもなく開口一番に放った言葉がこれだ。
「ひぃっ…!」とすかさず私は絶句。
世話焼きな祖母から生まれた、これまた世話焼きな母なので「祖母経由で見合い話が舞い込んでくることはあるかもしれない」と妄想半ば、面白半分に考えていたこともあったが、実際に「見合い話がある。」と言われても全く面白くないというのは今回で分かった。
1つだけ矛盾をあげるとするならば、見合い話を持ち上げたのが見合い結婚した祖母ならまだ納得がいくのだが、実際に今回の計画を企てたのが恋愛結婚した母の姉……つまり私の伯母であるという点だ。
恋愛結婚をしたにも関わらず、何故自身の姪っ子に見合い話を持ち掛けようと思い立ったのか…。それは後々ひも解いていくとして、更にその話を受けた際に異論を示さなかった母にも私は非常に不快感を覚えている。
伯母がこの見合い話を持ち出したキッカケというのが、伯母の夫である亡き伯父の法事で彼の実家に帰った際、伯父の兄や親戚達と意気投合し、「まだ結婚していない伯父の親戚の息子にいい娘さんはおらんかね?」という質問に伯母が意気揚々と私の名前を挙げたらしいのである。
伯父の兄と私は以前に何度か面識があり、会話も交わした際、私に非常に好印象を受けたと仰って下さってはいたが、ここで私の名前が挙がったことにより更に会話がヒートアップし「おお!あの娘なら是非!」ということで今回の見合い話の大体のフレームワークが完了したようだった。
この話を聞いて、あまり人前で愛想をよくして印象を良くしようとすることはかえって逆効果のようにも思えてきた。
問題である今回の見合い相手となる男性は、公務員/次男坊/30代前半ということでお見合いプロフィールとしては「テンプレ通り」とツッコミを入れたくなるほどのスペックの持ち主だった。
「まあまあ、お見合いだなんて堅苦しいのはお互いにあれだからね…軽~い気持ちでね…」という伯母の計らいにより、
「まずは2人で婚活パーティーに参加してお互いを知る場を設けましょう」
という命が出たのには、私でも流石に理解に苦しんだ。
母が伯母に「ルナには付き合っている人がいる」とは言ってくれたものの、
「大丈夫よ~そんな堅苦しく考えなくていいから~」
という全くもって右斜め上をゆく返答が返って来たらしい。
私の伯母という人は、これまたテンプレ通りの世話焼きさんである。
私に付き合っているが居ようがいまいが関係なしにノリノリでやる気満々の伯母には申し訳ないが、しっかりと今回の話は丁重にお断りさせて頂きたいと思う。そうでないと相手の方にも非常に失礼だ。
最悪の事を想定して、ズバッと伯母にも効く断り文句を考えてはいたが、
「ごめんなさい、私レズビアンだから…」
以上に思いつく言葉がないのが、なんだかやるせない。