ニッポンの「遊び」を変えた企業だ。複合アミューズメント施設のチェーン『ラウンドワン』。ボウリング、ビリヤード、カラオケ、さらには仲間と様々なスポーツが楽しめる『スポッチャ』など、遊びのデパートとも言える施設を運営、若年層からシニア層まで幅広い人気を誇っている。創業者の杉野公彦社長(53歳)に話を聞いた。
孝行息子
大学生のとき、父が経営するローラースケートリンクでアルバイトをしていました。ところが業績は赤字続き。父は様々な事業を展開していましたが「ローラースケート場はアカンかな」と漏らす状況でした。そこで、私がレポート用紙100枚を超える事業計画書を出したんです。リンクの面積を半分に減らし、空いたスペースにボウリング、ゲーム、ビリヤードなど、多様な屋内型アミューズメント設備を詰め込む案でした。
商売の原点
私もそうでしたが、当時の大学生は、4~5人のグループで遊ぶ機会が多くありました。しかし、何をするかとなると意見が割れる。だから、とりあえず集合し、何でもできる施設があればいいと思ったのです。自分がどんな店なら行きたいか、そしてお客様の問題解決につなげたいと考え、思いついたものでした。
想像力
アイデアは、真剣に想像することから生まれます。たとえば『スポッチャ』という施設のキッズコーナーには、周囲にマッサージチェアなどが設置されているから、大人は子供を遊ばせながら休憩がとれます。これは、私自身が子供達をショッピングモールなどのキッズコーナーで遊ばせていたとき、お守りでクタクタになっていたことに思い至り、生まれたものです。
アイデアだけでなく情報も、強い気持ちがなければ、捉えることも活かすこともできません。ゴルフに夢中の人が、ゴルフ雑誌を読み漁るじゃないですか。私はそれと同じように、お客様のことを常に考え、情報も集めています。
三つ子の魂
出身は大阪です。子供の頃から、三角ベースをやるときも、川に秘密基地をつくるときも、「監督」のような立場になることが多かった。仲間には、みんなでまとまりたい人もいれば、一匹狼の職人タイプもいるから、すべての人にベストの集団であることは不可能です。しかし、みんなが自分の得意なところを活かせるベターな集団ならつくれます。いつも、より多くの仲間が、より満足してくれるように考えていたのだと思います。
スコア
小学校時代はドッヂボールが得意でした。ラウンドワンの開業後は、映画『ハスラー』のブームもあって、毎日、仕事が終わったあと、当時のアルバイトのみんなとビリヤードをしていました。スポーツは、得意でもなく苦手でもない、という程度です。ボウリングは、2ゲームであれば160くらいのスコアを出せますが、3ゲーム目になると疲れてしまいます(苦笑)。ゴルフは6年前から始めましたが、スコアは90台でウロウロしています。
生もの
私は親の仕事の影響もあって、レジャーの仕事をしましたが、そうでなくとも何らかの形で起業をしていたと思います。父は食品スーパーも経営していたのですが、そこで野菜を売るアルバイトをしていたとき、「今日売らないとダメなものを販売するって面白い!」と思ったのです。
お寿司屋さんを例にとると……流行るお寿司屋さんは、毎日、大量に仕入れるから、安くてネタも新鮮です。ところがその逆になると、高くてネタも古くなる。マーケティングは難しいのですが、よいスパイラルに入れば一気に伸びるのです。
ロス
失敗も数多く経験しました。'04年頃、出店に向け物件を探しても、賃貸は今ひとつで、買わなければいいものがなかった。このとき金融機関の方に、銀行の「ノンリコースローン」を利用すれば、受け皿会社が土地を購入して建物を建て、弊社はそれを永続的に借りる形態をとれる(=賃貸に近い形態で出店できる)と助言され、店を増やしたのです。ところがリーマンショックのあと、突然、金融ルールの変更があり、弊社の借金で買った形にせざるを得なくなった。結局、一部は手放さざるを得ず、キャピタルロスが出ました。こういったルール変更が、驚くべき速さで行われることもある、と身をもって学びました。
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